日本株は米国堅調を受けどこまで反発するか NYダウは年初来高値にあと一歩まで迫る

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これらの数値を総合しての考察だが、米景気鈍化に対する過度な警戒が払拭されるなど、米連邦公開市場委員会(FOMC)や市場関係者に安心感を与える内容だったと言えよう。ただ、FOMCが利上げのペースを大幅に変更するような内容ではないと見る。つまり、年内の米国金利の引き上げの可能性は引続き低いということだ。

「12月利上げ予想」は依然27%のみ

シカゴ・マーカンタイル取引所が算出している米国政策金利の市場予想を示すFF金利先物通称「Fedウオッチ」(詳細は6月4日配信分を参照)では、雇用統計発表前に9月のFOMCで利上げ実施を予想する割合はゼロ%だったが、最新(東京時間の9日8時時点)では、11%となっている。

一方、据え置き予想は96%から86%に減少している。では、12月はどうだろうか?利上げを予想する割合は18%から27%に上昇。一方、据え置きは78%から69%にこちらも減少している。数字の変化を見る限りでは「利上げの可能性は高まったのではないか?」との声も聞かれそうだが、昨年利上げを実施した際の利上げ予想は70%超だったことを考慮すると、今回の数字の変化は市場のマインドが変わったといえるものではない。

年内の米国金利引き上げが低いことで、米国株は堅調推移となりそうだ。ただ、今回の6月の雇用統計の内容は、英国EU離脱(Brexit)の影響を一切受けていない。6月とあるが、米国の雇用統計は、「全米の企業や政府機関のおよそ40万件のサンプル」を対象に調査を実施し、その調査期間は、「毎月12日を含む1週間」となっている。Brexit決定はご存知の通り6月24日だ。「毎月12日を含む1週間」ということは、最大でも6月18日までとなる。

つまり今回の雇用統計は、Brexitの影響は一切織り込まれておらず、8月5日に発表される7月の雇用統計に要注目となろう。米国はBrexitの影響を受けにくいと市場で見られているが、7月の雇用統計を見極めたいとする市場関係者は多い。実際、昨年8月の人民元不安による世界的な株安が発生したとき、9月に発表された8月の雇用統計は前月比で大幅に落ち込む格好となった。

世界的にも7月に発表される経済指標の多くは、Brexitの影響を織り込みきれていないことから、8月辺りはさえない経済指標が連発する公算が大きい。そのようななか、ポンド安や金融緩和期待で上昇している英FTSE100はともかく、史上最高値更新に迫っているNYダウは、ややフライング気味といえなくもない。

7月相場は世界的に方向感が乏しくなっていくことが予想され、8月の経済指標悪化に対する下落に警戒しておいたほうがいいと考える。年内の米国金利引き上げへの期待感が高まりにくい状況下、日本株最大の懸念材料である円高を是正するのは難しい。

もちろん円高で恩恵を受ける銘柄、業種を対象として投資するのも一つだが、不透明感が強いなか無理に売買する必要はないだろう。10日の参議院選挙の結果、そして、今後の政策をじっくりと吟味するのも悪くない。なお、個人的には、金先物や銀先物の動向に注目している。投資資金が流入しており強い上昇トレンドが継続。ともに年初来高値を更新していることから、市場の関心はかなり高まっている。

さて、7月2日に「消去法的には日本株は買いなのか?」(タイトル名は「日本株が意外にもジワリ上昇しそうな理由」)と述べたが、前週の日米欧の株価推移(日経平均は-3.67%、マザーズは-6.32%、NYダウは1.10%、英FTSE100は+0.19%、独DAXは-1.50%)を見る限り、残念ながらそのような動きは観測されなかった。日本株の一人負けは続いている。

やはり「比較してみると政治的な安定」という消去法的な投資は、円高という大きな壁の敵ではなかったようだ。可能性は全くないとは言えないが、かなり低いと言えよう。下落局面で、頼りになるのは外国人投資家ではなく国内の年金ということだろうか。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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