ガラパゴス日本の頼みの綱はヤンキー大王だ 連銀の利上げ観測復活が日本株の側面支援に

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また、人間だけが「リスク増大=円買い」に賭けているわけではない。コンピュータシステムによるプログラム売買でも、リスク増大を示すデータやニュースが増えれば、まさに機械的に円を買っているファンドが多いと推察される。では、こうした理不尽とも言える円高が、どうなれば止まるかというと、「世界でリスクが高まった局面で円安になる」現象が実際に何度か繰り返され、円高に賭けた投資家が損失を被れば、解消されることになるだろう。一番痛いお仕置きは損失しかないのである。

為替相場はともかく、世界の株式市場の動きを見回すと、英国のEU離脱が最大のリスク材料だったと言われる割には、英FT100指数は、平然と年初来高値を更新している。欧州大陸諸国の株価は最近崩れたものが多いが、独DAXや仏CAC40は、2月の世界株安時の安値よりしっかりと上に位置している。2月の安値近辺で低迷しているのは、大手銀行が危ないと大騒ぎになっているイタリアMIB指数くらいのものだ。

円高時「機械的」に売られている

米ダウ工業株指数に至っては、「別にうちは欧州じゃないし」とどこ吹く風で、終値ベースで年初来高値を抜いて、史上最高値に近いところにあるし、経済がかなり悪い国の、ロシアRTSやブラジルボベスパといった株価指数も、年初来の位置としてはかなり高い。それに比べて、日本株はなんと情けないことだろう。

日本株がそこまで他国に劣後するような要因は、経済環境からは見出しにくい。確かに足元のような円高は、日本の輸出企業の収益にマイナスではあろうが、特に大手企業は、海外からの原材料や部品の調達、あるいは海外生産の比重を高めるなどして、円高による直接の悪影響はかなり軽減している。もちろん、海外収益を円換算して連結決算を作れば、利益が目減りはするが、それは何か企業の実態面で悪いことが起こっているわけではなく、単なる評価損だ。

おそらく、円高が輸出企業の収益実態に与える悪影響を、日本の株式市場が正しく評価して株価が下落しているというのではなく、前述のような円高と日本株安の過去の相関だけに基づいて、円高時に機械的に日経平均先物が売りを浴びせられている、というのが実態に近いのだろう。

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