たとえば仏ダノン社は、バングラデシュにおいて貧困層へのマイクロファイナンスに取り組むグラミン銀行と合弁企業を立ち上げた。両者は、グラミン銀行の持つ現地女性たちのネットワークを活用し、貧困層の人々に低価格で栄養価の高いヨーグルトを提供することに成功した。グラミン銀行としては貧困層の生活レベル向上を達成でき、ダノン社としてはこれまで入り込めなかった貧困層を新たな顧客として開拓することができたことになる。こうした革新的な現地社会とのWIN-WINのモデルは、本社の会議室で社員がいくら頭をひねっても出てくるものではないだろう。
元P&G社のCEOであるA・G・ラフリーによれば、NPOとの協働に積極的に取り組む同社では、イノベーションの40%以上が先進国以外の地域で生まれるようになったらしいが、これもうなずける話だ。
リソースがない中で困難な社会課題に取り組むからこそ、既成概念の枠を超えた新たなアイデアが生まれる。だからこそ、NPOとの協働こそがイノベーションへの一番の近道なのだ。
日本企業こそ、社会貢献に立脚した企業活動を!
以上、企業がNPOと協働すべき3つの理由を僕なりに書いてみた。
もしかしたら、NPOの活動をビジネスに活用するなんてけしからんという人がいるかもしれない。しかし、あえて言い切ってしまえば、その考え方はもう通用しないと僕は思う。これからの世界では、ビジネスと社会貢献を別々に考えることには意味がない。ビジネスとは社会に対して貢献するために存在しているし、社会を変えていく活動こそが、企業活動そのものなのだ。
冒頭でマイケル・ポーター教授の提唱した「CSV」という考え方を紹介した。しかし、実は「本業で社会に貢献する」という考え方は、多くの日本企業にとって新しい考え方でも何でもなく、むしろ創業時から息づくなじみ深い価値観ではないかと思う。
これからますます社会課題が多様化・複雑化していく日本。今こそ僕たちは、多くの日本企業が創業期に当たり前のように持っていた原点の価値観に、立ち返るべきではないだろうか。
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