「光」論争が激化 NTT接続料の行方
総務省が有識者を集めて立ち上げた研究会は昨年、報告書をまとめた。審議会の議論をリードしようとの思惑もうかがえるその報告書では、光ファイバーの接続料について五つの検討課題が明記された。主要コストである減価償却費について「耐用年数は現行の法定耐用年数(10年)よりも延びることが想定される」とし、「値下げ」も可能とする見解が示された。また、ソフトバンクも同様に償却年数を30年とすれば値下げできると独自試算を打ち出している。
当のNTTは「いろいろな検討をしている。(接続料が)上がる下がるというのは、その結果」(三浦社長)と、落とし所を見せようとはしない。だが関係者によると、水面下ではある仕組みの導入が計画されているという。接続料改定作業を行うNTT関係者によると「われわれは投資コストを回収するのが基本。今回は予測と実績に乖離が出た場合、その分の精算をするというスキームを織り込みたい」と話す。
つまりこういうことだ。現行の将来原価方式では、予測と実績に乖離が生じた場合、値上げ申請をするしかその差を埋める手だてがなかった。これに対し、現在検討されている精算方式は、一定期間ごとにコストの過不足を後払いで調整(=精算)しようというもの。そうすることで、再申請の手間が省かれるというわけだ。また、この方式によれば、需要予測が外れた場合の投資リスクも軽減できる。予測との乖離を極力減らすため、これまで7年だった予測期間についても、圧縮する方向で計画が作られているようだ。
基本となる接続料の水準をどれだけ動かし、具体的な精算の仕組みをどう決めるのか。その枠組みづくりは最終段階にあるものとみられる。しかし、新たな方式を打ち出すにも、NTTには弱みがある。光ファイバー設備のコスト構造やサービス収支をこれまで明らかにしてこなかったからだ。不透明な部分を残したまま、NTTが有利となる改定に持ち込めるのか。冒頭に示した貸し出し方式に関する反発が強まれば、議論は一筋縄ではいかなくなる。
先の中間決算において、NTTは3年前に掲げた「2010年の光回線3000万獲得」(固定電話加入者の約半分)という大目標を2000万に引き下げると発表した。獲得スピードが落ちれば、既存の固定電話網と光ファイバー設備が併存する非効率な状態が続くという別の問題も抱えることとなる。光サービスの拡大は、同社が掲げる中期経営戦略で柱の一つ。「光」をめぐる議論ははたしてどう決着するのか。それによっては「巨人NTT」の戦略にも少なからぬ影響が生じるだろう。
(書き手:井下健悟)
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