藤原:おそらく農水省で起こっていることも、厚労省で起こっていることも、全部同じだと思う。真ん中をターゲットにして全体に網をかけるから、物事が全然進まない。
復興がまったく進まないのも、平等の原則でやっているから。宮城県の雄勝町という壊滅した町があって、よく訪れるんだけど、本当に凄いよ。根こそぎ津波にさらわれて、小学校も中学校も使えないから取り壊される。そんな町で、復興予算を使って、最初にできる建築物は何だと思う?
渡邉:役所ですか?
藤原:役所だったらまだ許すけどね。海岸べりに、10メートルの高さの塀を作るの。刑務所みたいな塀。
渡邉:それは津波対策ですか?
藤原:そうなんだけど、なぜ最初に塀なのかというと、スーパー堤防は予算が一番先についたから。スーパー堤防としての予算がつくと、雄勝町はその予算を堤防以外には使えないんですよ。
でも、堤防を作ると、海岸から海がまったく見えなくなってしまう。私の感覚からすると、そんな場所に住んだり、仕事をしたりしたくなくなるし、海が見えないとかえって危ないんじゃないかとも思う。実際、地域住民も反対しているんだよ。
渡邉:へー、それでもできちゃうんですね。
藤原:できちゃうんでしょうね。しかも、役所で復興担当をしている責任者自身が、「藤原さん、ここに塀ができてしまうんですよ」と嘆いている。「それ、止められないんですか、他の用途に使えないんですか」と聞いても、担当者は「できません」としか言えない。
もし堤防の予算が10億円あるなら、むしろ丘の上に避難所付きの小中学校を建てる方がまだいい。市役所や町役場の機能を持った小中学校にしてもいいわけだし。
渡邉:結局、公務員は、仕事がそういうふうに上から全部トップダウンでくるので、やりがいがないですよね。教員や教師も含めて。
藤原:疑いを持てないんだよね。システムに押し切られて。本当に辛いよ。