「東大の世界史」はありえないほど面白い 「歴史は繰り返す」を感じさせる「大論述」
いかがだろう。解答例のように、世界情勢を大局的に見て答えることができただろうか。
また、国連、憲法、台湾、北朝鮮、難民、ドイツ、EU、ユダヤ、パレスチナと、現在の国際ニュースのヘッドラインを飾るキーワードのオンパレードであることに気づかれただろうか。
まるで、2005年度の問題となった1950年代の世界情勢が、現在を示唆しているかのようではないか。まさに「歴史は繰り返す」、いや「歴史は連綿と続いている」ということが実感できるだろう。
世界史は、ひたすら戦争の惨禍と対処のプロセスを繰り返す。ゆえに、争いとその対処に着目すること、そして、年号暗記だけでなく“俯瞰的に”“大局的に”世界史をとらえることが重要な視点になってくる。
世界史を“大局的に”とらえるためには
よく世界史では、タテ軸とヨコ軸と言う言葉を使う。タテ軸は各国史の正確な把握、ヨコ軸は前述のように地図を座右に置いた日常学習と、年号の暗記である。年号暗記をつまらないと思う人もいるだろうが、それに気を配らなければ問われている期間を限定できないし、厳密な同時代史を頭に描くことはできない。
これらの知識を複合的に組み合わせることで、世界の流れを大局的に捉えることができるようになってくる。
また、私が実際の講義や著書において心がけているのは、“生きた世界史”を体感してもらうことだ。
講義では、暗記の一助として、これまで100カ国以上を旅行してきた経験を生かしてさまざまな話をしている。たとえば、「ベルリンの壁」開放当日の話、ドイツ統一の式典の様子、ゴルバチョフが監禁された「八月クーデター」当日のモスクワの様子など、旅の中で触れてきた各地のリアルな様子や事件の状況を短く話したりしている。
また、サッカーの話と絡めて、スポーツと世界情勢の関係を説明することもある。たとえば、1986年のワールドカップメキシコ大会準々決勝。アルゼンチンvsイングランド戦、マラドーナによる“神の手”&“5人抜ゴール”は、フォークランド戦争でマルビナス諸島を英国に奪い返されたことのリベンジであること。スペインサッカー、バルセロナvsレアルマドリード戦(クラシコ)のチケットが高価である理由や、カタルーニャ州がスペインから独立しようとしている背景にはスペイン継承戦争やフランコ独裁政権などが複雑に絡んでいること――。
このように、土地の名称を世界史と関連づけて覚えてもらい、歴史は教科書の中にあるものではなく、現実と密接につながっているのだということを感じてもらえるよう工夫している。
世界史とは、ただ単に過去の出来事を知るだけでなく、そこから「真似してはならないこと」を学ぶことだと思っている。
よりよい人類の未来を創るために不可欠な歴史理解。「東大の世界史」は、自らの歴史力を蓄えたい人、よりよい未来を願う人にとって、最良のナビゲーターとなるだろう。
(構成:山岸美夕紀)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら