巷では「英国の次」として、日本時間27日に総選挙が行われたスペイン(結果はEU協調派の与党が勝利)や、EUに否定的なローマ市長が誕生したイタリア、極右政党が勢力を伸ばしているフランスやオランダの名前が取沙汰されている。しかし、この中にEU離脱を問う国民投票が決まっている国はない。
「英国の次」になる候補国で国民投票の実施が決まり、さらに国民投票で離脱という結論が出るまでには、相当の時間が必要である。金融市場が「EU離脱ドミノ」シナリオに賭けるには、あまりにも時間が掛かり過ぎるうえ、不確実性も高過ぎる。こうした現実を考えると、現在のような噂の段階で金融市場が「EU離脱ドミノ」を理由に暴力的になることは考えにくいといえる。
もしユーロ採用国がEUを離脱するとどうなる?
また、EU離脱と、ユーロ離脱を混同してはいけない。
今回英国がEU離脱に踏み切れたのは、共通通貨ユーロを採用していなかったことも大きい。これに対して「英国の次」となる候補国のほとんどは共通通貨ユーロの採用国である。
忘れてならないことは、ユーロ採用国がEU離脱をするということは、ユーロから離脱することにもなるということである。
ユーロから離脱するということは、その国は自国の通貨を持つことになるということだ。現在のユーロの価値は、中心的な役割を果たしているドイツ経済に大きく依存している。こうした中で、ユーロから離脱して、ユーロに対して強い通貨を持てる国がどのくらいあるのだろうか。
欧州の主要国は国債の40%前後を海外に頼っている。このような状況下で新たに発行される自国通貨がユーロに対して安くなってしまえば、対外債務が増えることを意味する。海外の投資家が国債を購入してくれているのも、ユーロ採用国には為替リスクがないからである。
つまり、ユーロを離脱し自国通貨を採用するということは、海外投資家に為替リスクを生じさせることになる。新たに為替リスクが生じるとしたら、海外投資家がこれまでと同じように国債を購入してくれるとは限らなくなる。
自国通貨が弱くなれば海外からの調達が難しくなることで財政的破綻リスクが高まり、緊縮財政を強いられることで自国経済の悪化を招くことになりかねない。
このように考えると、ユーロ採用国がEU離脱をするためのハードルは極めて高いといえる。ちなみに、財務省の資料によると、英国国債の海外保有比率は27%(2015年6月)と、39%のイタリア、40%のフランス、60%のドイツなどと比較して欧州の中で相対的に低い水準になっている。この点でもユーロ採用国よりも影響が少なくて済む立場にあったともいえる。
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