渋谷で1億円超の賃貸物件が売れまくる理由 売り手も買い手も国際化する東京の新潮流

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「この物件に関しては、中庭の石の彫刻や壁の左官、照明などについて日本のマイスターたちがアイデアを出してくれました。最初から答えが決まっていたわけではなく、マイスターやクライアントと対話しながら、期待以上のものが出来上がったのです。だから渋谷とロンドンでは当然、仕事の進め方は異なります」

浴槽は檜造り

つまり、英国流のやり方にこだわるわけでもなければ、日本に合わせるわけでもない。日本と英国の文化がクロスした、インターナショナルなリノベーション事業だったのだ。

付け加えると、パリー氏が日本の職人たちの機微に通じているのには、1990年代に東京工業大学で教鞭を執った経験が役立っているという。

こうした物件を購入する富裕層を満足させるためのポイントは何かという質問には、パリー氏はこう答えた。

中庭には石彫家・和泉正敏と、左官職人・挾土秀平による作品が置かれている

「まずデザインがオーセンティックであるということ。ギミックではなく正統的、本格的であることが求められます。また、富裕層はプライベートを大事にすると同時に、客を呼んでもてなすことも大事にします。ふたつを両立することが、重要だと考えました」

このような国際基準のクオリティを備えた物件に、どれほどの需要があるのだろうか。

グロブナーの駐日代表を務める廣井康士郎氏は、東京における高級レジデンス市場はさらに活性化すると予測する。

東京の高級レジデンスは“お買い得”

廣井氏はまず、東京の高級レジデンスが“お買い得”であると指摘した。

「東京のGDPは約177兆円、対してロンドンは93兆円です。一方、ロンドンではハロッズの目の前にある物件のペントハウスが250億円で、坪単価が4500万円。ニューヨークの42thパークアベニューのペントハウスは100億円で坪単価は4000万円、オーパス香港も65億円で坪単価4500万円です。翻って東京のパークコート赤坂桧町ザ・タワーは15億円。仮に1億円持っているとして、香港で買えるのは6坪、ロンドンで7坪、でも東京なら25坪の住宅が買えるのです」

東京の住宅が“お買い得”だと言われても実感はなかったけれど、こう聞くと確かにそう思えてくる。そして、この“お買い得”の物件を、特にアジアの富裕層が買いたがっているのだという。

「アジアの富裕層に聞くと、彼らが次に住宅が欲しい場所は東京だと必ず答えます。彼らは日本で心地よく買い物を楽しみ、美味しい料理を食べている。アジアの人にとって東京は、ロンドンのように磁力がある場所なのです」

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