再三の指摘でやっと 三菱自リコール問題 国交省の指摘で過去最多
忍び寄る三つの不安
三菱自は11~13年度の中期経営計画で東南アジアを中心とした新興国戦略の強化を打ち出し、売上高、営業利益ともに着実に伸ばしてきた。収益体質が強化されてきた矢先の今回のリコール問題は三つの不安を与えそうだ。
一つ目は販売面への影響だ。三菱自は12年10月に重要車種と位置づけるSUV(スポーツ多目的車)「アウトランダー」を刷新、13年初には同車をベースとしたプラグインハイブリッド車を販売する予定だ。新型車投入が加速する中、今回の騒動によるブランドイメージの低下は否めない。ある三菱自ディーラーの販売員は「今回の件がどこまで影響するのか見当がつかない」と販売の先行きに不安をにじませる。
二つ目は日産自動車と進める軽自動車の合弁事業の行方である。13年度前半には共同開発する新型軽自動車を発売予定で、同車は三菱自が全量生産する。くしくも今回のリコール対象にもなった「eKワゴン」の後継車だ。
三菱自の今回のリコールはいずれもエンジンからオイルが漏れないようにする「オイルシール」と呼ばれる部品について、車両生産時と異なる材質のものに交換した場合にオイルが漏れ出すというもの。国交省によると「客観的な事実としてこのようなリコールは珍しい」と指摘する。初歩的な品質技術に重要な欠陥があるとすれば問題だ。
日産は現時点で計画を変更することはないとするが、今後の動向次第では発売時期を含め計画変更の可能性もありえる。
三つ目が優先株の処理とその先にある復配シナリオへの影響だ。00年と04年の2度のリコール隠しの発覚で、経営危機に陥った三菱自。同社に対しては三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行の御三家と三菱UFJ信託銀行を中心とした三菱グループ各社が04~06年に約5000億円の優先株を引き受けた経緯がある。ただ、優先株への配当はいまだなく、御三家と信託を除いたグループ企業は12年夏以降に普通株への転換を終えた。
益子社長はかねてから現中計期間中に優先株を処理して復配にメドをつけると公言してきた。だが、リコール問題が長引けば、実行が不確かになるのは否めない。そればかりか「リコール隠し」と認定されれば、益子社長の引責辞任も避けられず、厳しい局面を迎えるだろう。
(週刊東洋経済 2013年1月12日号)
(撮影:引地信彦)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら