「路線バスの旅」に見る地方交通の厳しい現実 乗り継げず歩きが多くなるのには理由がある

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旅のリーダーシップを取る太川陽介さん(撮影:梅谷秀司)

九州へは、すでに出雲(島根県)から鹿児島を目指した第9弾(2011年7月30日放送)で足を踏み入れているが、今回は「ルートの途中にチェックポイントを設け、九州の東側を回ってもらう」と、プロデューサーの越山進さんはいう。ゴールできれば、これまで上陸していない沖縄県を除いてほぼ全都道府県制覇となるはずだ。

出発地と目的地をどう決めるかは「なんとなくですね」と越山さん。以前は季節ごとの風景や名物などを多少なりとも意識していたというが、最近は「日本地図に線を引いてみると全国ほぼ網羅されている」。そこで、最近は「空いているところ」を狙ってスタートとゴールを設定しているという。

目的地にたどり着けるかどうかは、太川さんをはじめとする3人の判断と運次第だ。いままでのところ16勝7敗と、成功した回数のほうが多い。第21弾・22弾は失敗が続いているため、今回の第23弾は果たして成功するのか、それとも史上初の3連敗になってしまうのか?という点が視聴者の興味を引くが、実は「失敗」こそが、この番組が定番企画化したきっかけだったという。

「失敗」が受け、ガチンコ旅路線へ

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天然キャラで笑いを誘う蛭子能収さん(撮影:梅谷秀司)

路線バスを移動手段として乗り継ぐという旅番組は昔から存在し、それ自体は新しいアイデアではなかった。2007年の第1弾では、路線バス以外にタクシーなどの交通手段も使い、3泊4日で目的地を目指すというスタイルは今と変わらないものの、比較的「普通の旅番組」に近い形でのスタートだった。

「ローカル路線バスだけにこだわる」という現在のルールの基礎が生まれたのは、東京から京都・三条大橋を目指し、滋賀県内で時間切れとなった第2弾(2008年3月22日放送)以降だと越山さんはいう。

この回は見事に失敗したものの、そのままの様子を放送したところ、視聴者からの反響は大きかった。ここから着々と「旅番組」から「ガチ旅」路線への進化が進み、タクシーの使用禁止、バスのない区間は徒歩でつなぐといった、現在見られるルールもだんだんと形になっていった。バスを移動手段にした旅番組が増える中で「ガチンコ感」「必死さ」を特徴とした「旅のドキュメンタリー」としてのカラーが次第にはっきりしていった。

今ではすっかり番組の存在が浸透したことから、バス案内所のスタッフや車内で出会う人々などがルールを知っていることが多い。バスに乗りこむと「本当にガチでやってるんですねとよく驚かれます」(越山さん)という。

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