「路線バスの旅」に見る地方交通の厳しい現実 乗り継げず歩きが多くなるのには理由がある
番組にドラマを生んでいるのは、バスの本数の少なさや、初めてその土地を訪れた人にはなかなか分からない路線など、ローカル路線バスを乗り継いで旅をすることの困難さだ。思い通りには進まない旅の面白さと同時に、日本の地方公共交通の現状が浮き彫りになっている部分でもある。
最近は徒歩でバス路線の間をつなぐことが増えている。水戸から長野を目指した今年1月放送の第22弾は、そもそもやや難しいルートだったとはいうものの、初日から徒歩が約7キロ、2日目も最初から徒歩という苛酷な旅。越山さんは「たぶんトータルではフルマラソン以上の距離を歩いてますよ」という。
徒歩が多くなるのは、簡単にいえば路線が隣の街とつながっていないためだ。特に鬼門といえるのは県境。「ローカルの路線バスは地域ごとの乗り物なので、県を越えられないのは仕方ないでしょう」という越山さんだが、2007年の番組開始時と比べても、バスの路線そのものが「減っているのではないか」と感じているという。地元の人に教えてもらっても、すでに路線が廃止されているケースもある。
代わりに増えていると実感するのはコミュニティバスだ。越山さんは「めちゃくちゃ多いですね。地方だと政令指定都市でも隣の町はコミュニティバスだけだったりするので。マイクロバスや小さいワゴン車で走っているのを見ると(路線バスを維持するのは)大変だなと思いますね」と話す。
6年間で1万キロが廃止された
その実感を裏付けるように、実際に路線バスの廃止は進んでいる。国土交通省のデータによると、番組開始時の2007年度から2013年度までで、高速バスを除く路線バスは全国で約1万キロが廃止された。これは代替の別路線などによって引き継がれることなく、完全に消えたルートの総延長だ。これだけの路線バスが消滅していれば、年々乗り継ぎが難しくなっていくのも当然だ。
路線バスの利用者も年々減少を続けており、2007年度から2013年度までの6年間でも、約42億4400万人から41億7600万人まで6800万人減った。101億人を超えていたピーク時の1968年度と比べると4割程度まで減少している。
東京や大阪といった大都市よりも地方を出発地、ゴールとしているケースが多いのは「絵(風景)もきれいだし、田舎の方が面白いことがある」という理由とともに、混雑する都市部では撮影が難しいのも理由だ。これは同時に、地方の路線バスの利用者が少ないことを物語っている。
視聴者から見ると、路線がつながらない、便数が少ないといった「旅の面白さ」を生んでいる部分が、ローカル路線バスの厳しい実情を物語る部分でもあるわけだ。
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