実は、トム・フーパー監督と会ったのは『英国王のスピーチ』の公開前で、まだ彼は無名だった。しかし、「絶対に同録したい」という彼の熱意は僕と同じものだったし、彼と話してみて、彼の頭の良さが伝わった。それでは、彼に任せようと思った途端に『英国王のスピーチ』がああいうこと(アカデミー監督賞を受賞するなど、世界的なヒットに)になってね。それでもまだ映画の『レ・ミゼラブル』をやりたいと言ってくれたんで良かったよ(笑)。
ヒットの秘訣を豪語する人間はウソつきだ
――キャメロンさんは誰もが認める世界的なヒットメーカーですが、ヒット作を生み出す秘訣はあるのでしょうか。
そんなのはないよ! ヒットの秘訣が分かるなんて豪語する人間はウソつきに決まっている(笑)。ただ、僕が一番大事にしていることは、とにかくストーリーとキャラクター。それだけは言える。
今まで、僕がアイデアを思いついて作ったミュージカルはない。全部ほかの人のアイデア。たとえば「キャッツ」を一緒に作ったアンドリュー・ロイド・ウェーバーから、「こういう歌詞があって、こういう音楽があって……」と言われると「それいいね!」と。そういったインスピレーションが湧いてくるだけなんだ。
「レ・ミゼラブル」のときも、まさか小説からミュージカルを作るなんて思ってもみなかった。でも僕の下に届いたコンセプトアルバムを聞いて、これは特別だと感じた。そういう良いものをかぎ分ける才能はあるのだと思う。
――「レ・ミゼラブル」にしても、「ミス・サイゴン」にしても、人々の心に訴えかけるものがあります。人々を感動させるコツはあるんですか?
人々を感動させるには、とにかくストーリーが大事。たとえば、繰り返し上演されるオペラなどは、ストーリーが感動的で、感情移入ができるものになっている。やはりストーリーはそういうものでなくてはいけないし、何より好きになれるキャラクターでなくてはいけない。
それから僕は、裕福な特権階級の物語には興味がない。彼らがどんなにみじめな生活だとぼやいたとしてもそんなのは関係がない。普通の庶民を描く物語が好きなんだ。僕は田舎の農場で、今でも牛や羊に囲まれて暮らしている。周りにはショービジネスをやっている友達も少ないし、パーティにもほとんど出ない。でも、東京やロンドン、ニューヨークで行われるパーティは好きだけどね。それで楽しい数日間を過ごした後は、また牛たちの元へ戻るというわけだ(笑)。
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