「中央銀行バブル」は、いつ完全にはじけるか ギリシャ神話「イカロスの翼」になる危険性
そうなると、いくらタカ派的発言をしても、市場は信用しない。結果、過剰なリスクテイクが進むことをFEDは恐れる。結局FEDは、威信を守るために、本当はやりたくない追加利上げに追い込まれるリスク。ただし今回はFOMCを前にBrexitの懸念が増幅され先週から株価は下落していた。この環境なら、FEDは利上げをする必要はなかったのだろう。
だがBrexitはどうなるかわからない。そもそも国民投票には法的拘束力はなく、仮に国民投票がYESでも、議会が承認するプロセスがある。また、もしそこで米株が新高値を更新するようなことにでもなれば、7月のFOMCでの利上げの可能性はぐっと高まる。
米国金融政策のジレンマとは?
ところで、今のFEDには1)雇用促進2)インフレ抑制の相反する二つの政策目標がある(ダブルマンデイトという)。この起源は1946年。当事FEDは政権から独立した存在という立場ではなく、その後、独立性が高まるにつれ、インフレ抑制重視になった(マクチェスニー議長の頃といわれる)。
そしてダブルマンデイトに戻したのが1977年。この頃は雇用と成長の関係が代表的な「フィリップスカーブ」などで解説できた時代だ。しかし今の米国経済の姿は明らかに違う。
GDPの主力は個人消費である。中でもミレニアル世代(米国で2000年代に成人や社会人になった世代)は、物よりもサービスにお金をかける。雇用も失業率の基になる労働参加率は低水準。一方でUBERなど、新しいサービスなども生まれている。
日頃の発言から、筆者は恐らくイエレン議長をはじめFED関係者が、「これまでのFEDのルールブックが時代に合わない」ことを感じていると思う。
ただFEDの法律が変わらない限り、彼らが自分達でルールブックを変えるのは限定的でしかない。政策の理由づけは、昔ながらの形式的なモノになる。結果、市場は迷う。そうなるとFEDは「データ次第」と言葉で時間を稼ぐしかない。しかし、実際はデータ次第ではなく、マーケット次第、株価次第になっている。それが前述の「チャートの暴露」に繋がった。
では、FEDの政策は今後どうなるのか。経済は既に個人消費中心だ。リーマンショック後は、貧富の差拡大は承知の上で金融政策を拡大してきた。ところが、先進国でのデフレの三要素、1)ハイテク化 2)貿易拡大 3)老齢化のパワーは強烈だ。
そこで先進国の中央銀行は、強烈なインフレ要因の流動性の拡大(マネープリントQE)で対抗してきた。しかし現状の実態経済の需要は乏しく、膨大な流動性は、債券市場でのマイナス金利を促進している。ただ天災や戦争などの人災でも突然モノの値段は上がる。インフレは突然やってくることがある。その時の準備は出来ているのだろうか。
いずれにしても、現在の先進国の中央銀行は、ギリシャ神話の「イカロスの翼」のような状態にある。イカロスは、海面から上空を飛びなから太陽を目指した神である。しかし、最後、太陽に近づきすぎたため、蝋でできた翼は熔けてしまった。そして墜落して死んだ。
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