フロリダ惨劇から学ぶ「テロ時代の暮らし方」

疑心暗鬼に包まれた世界をどう生き延びるか

テロの実行犯は少しずつ、私たちの命という、編み上げられた生地の繊維を引き裂くことに成功してきた。こうやって複数の命を奪うとともに、日常生活を瓦解させるのも彼の仕事なのだ――これもこうした戦争のような大虐殺を行う、もう1つの理由だ。日々の生活の流れのなかに恐怖を植え込むことは、戦時中に見られる戦略の一部である。

私は東西に分割されたエルサレムの西側で何年も生活していたことがある。イスラエルの管理下に置かれ、ほぼユダヤ人に囲まれた場所だ。私たちは当時、突如鳴り響く爆発のようなパンパンという音によく驚かされた。それはときに自爆テロによる攻撃であった。それよりも多かったのが、イスラエル軍用機のジェットエンジンが発する衝撃音だった。

こうした爆発音が聞こえてくるたびに、町の人々は空を見上げ、このあとに続く軍用機の音を確認するために耳をそばだてた。あとに続く轟音がなければ、直後に彼らの耳に入ってくるのはサイレンの音である。そうなれば、人間の体を構成していた部位が見渡す限り散らばる恐ろしい光景、めちゃくちゃに破壊された人々の生活、新たな孤児と嘆き悲しむ親、これがまた繰り返されるのだ。

己の理想、文化、宗教、人間性、自由を掲げ、まさにあなたのことをその考えと相容れない存在として見ている人間がまわりに潜んでいる可能性に気付いてしまえば、深く考えずして心地よい生活を送ることは容易ではない。さらに、ナイトクラブのパルスで人々を惨殺した犯人にも当てはまったようだが、その人間はあなたやあなたのような人間を排除するためには死をもいとわず、率先してあなたが住む世界に大きな混乱を巻き起こそうとする可能性もある。

「パルス」になり得る場所はいくらでもある

資本主義に生きる日々の生活のなかに、代わりとなる場所はいくらでもある――カフェ、学校、スーパーマーケット、競技場、空港、ロックコンサート会場、ナイトクラブ、麺類を食べられる飲食店。もちろん時代を問わず人々が詰めかけるお気に入りの場所もある。ショッピングモール、バスや地下鉄だ。

こういった場所はすべて自爆テロで死のうとする殺人犯の攻撃対象になってきた。ビーチリゾートに青空市場やホテル、礼拝の場も例外ではない。言い換えれば、対象となる複数の文化が集まる場所なら、どこであっても安全と見なすことはできない。

殺人犯にとって、あなたは人ではなく象徴だ。ありのままの自分でいるだけで、今住んでいるところに住んでいるだけで、あるコミュニティに、あるいはある文化に属しているだけで、あなたは敵になる。これは真実だ。爆撃犯や銃撃犯がどこの出身であろうと関係ない。どの程度の迫害を受けて彼あるいは彼女が生きてきたかも関係ない。そして、襲撃している瞬間は、爆撃犯や銃撃犯は、本人からすれば人間ではない。彼は自身が信じる武器なのだ。

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