LINEの売出価格2800円は高いか、安いか 収益力やビジネスモデルから妥当性を検証

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Facebookは2012年に上場したが、上場前の2011年度決算では売上高純利益率18%を確保。上場3年前の2009年度決算から黒字化にこぎつけている。そして、上場後も黒字決算及び高い利益率を維持しながら順調成長し、2016年6月現在はPER80倍程度となっている。Facebookは上場前から盤石な黒字体質を築いていたのだ。株価も公開価格の38ドルから上昇し、2016年6月10日現在は、116.62ドルと、約3倍まで上昇している。

これと対照的なのが、twitterである。twitterは上場前から赤字体質で、上場から3年を経た今も、赤字から脱却できておらず、株価は右肩下がりである。株価は2013年に株式公開されたときの26ドルだったのが、2016年6月10日現在は14.02ドルと、約半値になってしまった。twitterは、一般的にSNSの世界では「勝ち組」と認識され、実際に世界でユーザー数を増やし、売上も伸ばしている。しかし、それにもかかわらず収益性が伴っていない。

LINEの「伸びしろ」は限りがある

LINEに関しても「投資」という目線で見る場合には、LINEのビジネスモデルが収益性を伴うものなのかを考慮しなければならない。LINEは上述したように継続事業ベースでは直近の4半期決算は赤字ではないものの、売上高純利益率は4%とそれほど高くはない。

また、過去3年の通期ベースでは、2013年は売上高395億円、純損失63億円。2014年は売上高863億円、純利益20億円、2015年は売上高1206億円、純損失79億円。2014年度にしても売上高純利益率は2.3%で、しっかり利益を出したというよりも、「何とか黒字になった」という印象だろう。

Facebookとtwitterが株式公開前の体質を引きずっているという事実を踏まえると、LINEに関しても、株式公開後に大幅に収益体質が変化するということは、期待しすぎないほうが良いのかもしれない。

また、売上の伸びに関しては、国内でLINEは既に普及しているので、少なくとも国内においてLINEの「伸びしろ」は限りがある。つまり、LINEは、「これから伸びますよ」という段階ではなく、「かなり伸びた」段階でのIPOということになるだろう。そのようなステージの会社にPER100倍がつくのであるから、これを維持するハードルは高いと言わざるを得ない。

今後は、アジアなどの新興国でユーザー数を伸ばしたり、先進国でFacebookやtwitterと闘ってシェアを奪ったりしていかなければならないということは、今後の売上の伸びに対するリスク要素になりえる。だが、このハードルを乗り越え、世界でFacebook並みのユーザー数を確保することができれば、LINEも兆円単位の時価総額を実現することは不可能ではなさそうだ(Facebookの時価総額は、6月10日現在 約33.4兆円)。

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