出店攻勢に拍車かかるコスモス薬品 九州地盤のドラッグストアが急拡大

拡大
縮小

経済産業省は10月届出分の新規出店予定の大型店舗を公表した。それによれば、新規大型店は58件で昨年同月より4件増となり(表参照)、前年同件数となった9月を除き、新規出店のペースは継続している。

コスモス薬品のすさまじい出店攻勢

2009年10月以来37カ月連続で新規届出を出し、この数年出店攻勢に拍車がかかっているのが東証1部に上場するコスモス薬品(本社・福岡)である。

同社は、九州エリアをメインに「ディスカウントドラッグコスモス」約470店舗を運営しているが、06年から新規届出が急増、07年に41件、リーマン ショック時の08年~09年はペースダウンしたものの10年は42件と回復。東日本大震災が発生した11年は、展開エリアが九州・中四国であったため地震 の打撃を免れたことが幸いし47件と過去最高を記録。12年も10月までで39件と前年並みの高水準を保持している。

もちろん同社の業績は絶好調。03年に連結決算を開始して以来、9期連続増収。売上高は03年の424億円から12年は2790億円と6.6倍、店舗数も108店舗から457店舗と4倍まで拡大した。

では、なぜコスモス薬品はこのような怒涛の出店攻勢が可能なのか。その秘密は、同社が新たに開発したという「小商圏型メガドラッグ」というビジネスモデルにあり、わかりやすくまとめると以下のようになる。

メガ・コンビニ&ドラッグストア

会社名称に「薬品」という言葉が含まれていることから、街中でよく見かけるドラッグストアを想像しがち。しかし、コスモス薬品は売上高の52%を占めるの が食品。医薬品は17%に過ぎず、ドラッグストアとはいえない。かといって、日持ちのしない生鮮3品を扱わないためスーパーとも異なる。商品構成から見 て、非常に類似している業態、それはコンビニエンスストアなのである。

しかも、一般的なコンビニやドラッグストアの店舗面積は300㎡以下であるのに対し、コスモス薬品の店舗面積は1000㎡~2000㎡で規模はその3倍~7倍。つまり、メガ・コンビニ&ドラッグストアということになる。

コスモス薬品は、この新タイプの店舗を商圏人口1~2万人程度に対し1店舗という割合で商圏を独自に分割して出店していく。仮に商圏人口が10万人ならば 最大10店舗。店舗立地により小売業界でタブーとされる自社店舗による市場の共食いも懸念されるが、あえて厭わない。出店する場所は、カテゴリー的に競合 が多くなる繁華街や商店街ではなく、店の選択肢が少なく顧客の居住地点に近い郊外。その狙いは商圏を深く耕すことにあり、商圏が狭い分コンビニ同様、大量 出店が可能となるのである。

激安価格と豊富な品揃え

最近のコンビニも、ディスカウント価格で販売する商品も目立つようになったが、通常は定価販売が基本。また、店舗の面積が限られるため扱う商品も売れ筋を中心とした品揃えとなり、新製品の発売と同時に商品の入れ替えも激しいものとなる。

これに対し、コスモス薬品はいっさい特売がなく毎日激安販売がポリシー。ローコスト運営による低価格を実現するため、クレジットカードや電子マネーもなけ れば、顧客を囲い込むためのポイントカード(2004年に廃止)もない。これで浮いたコストをすべて価格に反映させているのである。また、扱う商品も大型 店という広さを生かし、生鮮3品以外の食品や医薬品、化粧品、日用雑貨などの消耗品を豊富に揃えている。

 

 

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