ダイハツ、新型「ムーヴ」に映る危機感 スズキ「ワゴンR」、ホンダ「N」シリーズを迎撃

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新型「ムーヴ」を披露するダイハツの伊奈功一社長

こうした衝突回避機能は、スバルなど一部メーカーが積極的に搭載、大きな営業成果をあげ、各社が続々と追従しているところだ。他社のものでは、高級車やオプション搭載が中心で、価格も10万円程度の設定が多いが、ムーヴでは5万円で装備する。「日常使う軽自動車だからこそこうした安全装置は必要。今後出す改良車、新車には全て搭載していく」(伊奈社長)方針だ。

このような安全装置は天候や周辺環境などさまざまな条件によって動作、効果が変わるため依存は禁物。だが、試乗エリアで体験する限りでは、時速15キロ程度で先行車に見立てたダミーに接近すると直前で自動急ブレーキが作動し、数十センチメートル手前で停止する。また壁の前に止まっている状態で急アクセルを踏んでも、エンジンの回転数は上がらずクリープするのみ。高齢者や脇見など、ブレーキを掛け遅れたり、アクセルと踏み間違えたりする事故の低減には十分役立ちそうだ。

競合の猛攻で夏以降は息切れ感も

今回、ダイハツがここまで力を入れて「マイナーチェンジ」に臨んだ背景には、軽自動車市場の競争激化を受けた危機感がありそうだ。2位のスズキとの競争に加え、11年末にホンダが軽自動車に本格再参入。ホンダは第一弾のトールワゴン「NBOX」が大ヒット、さらに11月にはムーブのジャンルに近い「N-ONE」も投入し、シェアを急伸させている。スズキ「ワゴンR」のフルモデルチェンジもあり、ダイハツはミライースを筆頭に概ね好調を維持しているものの、競合の新車の前にさすがに年央夏以降は息切れ感が出ていた。

12年下期は、本来であれば高車高トールワゴン「タント」をフルモデルチェンジする時期だったが、伏兵ホンダ・NBOXが想定外の人気を獲得。現行タント自体はモデル末期にも関わらず堅調な販売数を維持していることから、NOBX人気が落ち着くとみられる13年半ば以降に先送りした。代わりに、燃費や価格で訴求しやすいムーヴに大きな改良を施し、「リッター30キロ」の低燃費でヒットしたミライースの再来を狙った、というわけだ。

少子高齢化の中で構造的な減少傾向が避けられない日本の自動車市場。燃費が良く車体価格や維持費も安い軽自動車の質が上がり、ますます競争が激化していくことは必至だ。
 

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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