アトキンソン氏「スポーツ産業の課題」を語る 日本のスポーツは観光並みに伸び代だらけだ
決してスポーツを冒涜しているわけではありません。「スポーツ観戦」というものを、熱心なファン以外の人たちも丸1日、楽しめるような総合的なイベントとしてとらえてみることが大切だと申し上げているのです。実際にアメリカでは、それまでスポーツでしかなかった産業を「客目線のおもてなし産業」に変えたことで、60兆円という、自動車産業を上回る規模に成長させたのです。
ラスベガスもいい例のひとつです。カジノだけではなく、芝居、コンサート、そしてさまざまなレストランがあります。私はギャンブルはやりませんが、エンターテインメントを鑑賞するためにラスベガスを訪れた経験があります。
このような話をすると決まって、「そんな風に、試合に興味のない客が多くなってもファンは困るだけだ。今のままでいい」という方がいます。観光も同様で、「日本のことをよく理解していない外国人が多く押しかけても、観光地が混雑して迷惑なだけだ」とよく反論されます。
ただ、スポーツ産業が現在の5兆円から20兆円に成長すれば、ファンにとってもさまざまな恩恵があります。業界が繁栄すれば選手のレベルも上がりますし、設備も増強できます。チケットも現在では「紙」の印刷物ですが、アメリカのようにチケットレスで、携帯やスマホで簡単に予約できるようになれば、ユーザーメリットにもつながります。
観光もしかりです。外国人が来ることで文化財が潤い、それで今のようにボロボロになるまで修理をしない文化財が整備できるようになります。さらに、日本の文化を後世に伝えるような解説やガイドが充実すれば、日本人にとっても良いことではないでしょうか。
「産業化」していない未成長分野を開拓すべき
ご存じのように、日本はこれから人口が減少していきます。GDPは「人口×生産性」です。Jリーグの観客動員が思うように伸びず、各チームの経営が苦しくなっているように、どうしても衰退していく産業はでてきてしまいます。
そこで重要になってくるのが、それまでやるべきことをやらず、「産業化」していない未成長分野です。具体的には、「客」の幅を広げたり、リピーターを増やしたり、単価を上げたりという取り組みが求められています。その「伸び代」をしっかりと活かせば、人口減少のマイナスを十二分にカバーできます。そのなかのひとつこそが、スポーツ産業なのです。
そのためには、やはり外国人観光客の視点が必要となってきます。「外国人に媚びてまで儲けたくない」と言う人もいますが、現実問題として、人口減少社会のなかで産業として成長していくには、自国民のニーズだけでは難しいのです。
わかりやすいのが、スキーです。日本にはこれまで、ヨーロッパのような長期滞在型のスキーリゾートがありませんでした。これは日本人のなかで、スキーも海水浴など他のレジャーと同様に、1泊2日という短期旅行が基準になっていたからです。
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