安倍政権は、中国軍の「暴走」につきあうな 中国は中長期で見れば強くない

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日本に交渉しやすい時期が必ず到来する

日本が見誤ってはならないのは、中国は中長期的に見たときに決して強くはなく、その結果、日本にとって交渉しやすい時期が必ず訪れるということだ。

習近平体制が名実ともに正式にスタートしたが、一枚岩などでは決してない。いわば小さな細胞の集まりだ。11月に行われた第18回中国共産党大会の政治報告でも胡錦濤主席が「上に政策あれば下に対策あり、と呼応するような状況を許してはいけない」といった趣旨の発言をしたように、中国の指導部は、汚職、貧富の拡大など容易に解決できない難問を抱えてしまっている。

中国経済を見ても、海外からの投資のピークアウト、生産年齢人口の減少などが予想され、中長期で見れば決して強くない。よくいわれる内需への構造転換についても、若年層の就職問題や社会保障の脆弱性などから見て、そう簡単ではない。時間が経てば経つほど、交渉では日本が有利になるはずだ。

こうした優位にある状況で、安倍新政権は焦らないほうがよい。

また、安倍晋三総裁が最初の外遊先として米国を訪問する意向を示すなど、日米関係を重視するのは無難な選択だ。だが、むやみに尖閣諸島の話を日米関係の中で引き合いに出すべきではない。

米国のスタンスは、先日中国に示したように「尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲内である」ことを明確にしている。だが、「適用範囲かどうか」と言われれば「そうだ」と答えているだけであって、ホンネは、同盟国ではあっても「人のことでケンカさせられる」のは嫌だと考えている。本来は「適用範囲か」と問われることも嫌なはずだ。

これは過去の台湾の例が示している。すなわち、陳水扁総統(2000年5月~08年5月)が当時米国の力を借りて独立を焦り、米国を追いつめるような状況をつくったが、結果的に逆に立場を悪くした。

中国にとっても、今の尖閣諸島の状況を劇的に変えることは非常に難しい。もし本当に軍事力を行使するなどすれば、当然、日本もそれに対処する正当な事由が生まれるわけで、実際に中国がそこまで踏み切ることは非常に難しい。

現在、実効支配をできている日本が強い立場にいるのであり、いま焦って日本からあれこれと動く必要はない。逆に急ぐと相手側にチャンスを与えることになると考えるべきだ。

富坂 聰 ジャーナリスト・拓殖大学教授

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とみさか・さとし / Satoshi Tomisaka

中国ウォッチャーとしては現代屈指の一人。1964年愛知県生まれ。北京大学中文科中退。週刊ポスト、週刊文春などで名を馳せたのち、独立。中国の内側に深く食い込んだジャーナリストとして数々のスクープを報道。2014年より、拓殖大学教授。

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