地域間対立は浮上するか?
日本では、選挙制度改革後、民主党と自民党が二大政党を形成してきた。しかしその内実では、他の国々と同様、地域ごとの選挙区政治が意味を持つ可能性を否定できない。
例えば東京など、都市の選挙区で競争する民主党と自民党の候補者は、非常に似通った政策的志向を持つ。農村部の候補者も同様だ。
そして、都市部(あるいは農村部)での民主党と自民党の候補者の違いよりも、民主党(あるいは自民党)の中での都市部と農村部の候補者の違いの方が遥かに大きい。結果として、両党の違いは見えにくいが、それぞれの党内には激しい対立が起こっている。
今回の「第三極」に特徴があるとすれば、地方で活躍してきた政治家率いる地方政党の色が濃いことだ。大阪を基盤とする日本維新の会に、名古屋市長をリーダーとする減税日本はその典型だ。
また実は、みんなの党も神奈川・栃木などの特定地域で強いという実績がある(このような地方政党の伸長については、近著『大阪――大都市は国家を超えるか』で論じているのでご笑覧いただきたい)。
それらが選挙戦の序盤で、「第三極」として結集し、むしろ民主党・自民党と同じように、それぞれの地方の色を消すことに躍起になっているのは興味深かった。
地方の色を出すよりも、政党としての政策的特徴を明示する方が、有権者の支持を集めるという判断があったのだろう。
総選挙の結果、支持を広げた「第三極」のうち、政策的な純粋さを強調したみんなの党はそれほど議席を伸ばすことができず、そのみんなの党からたちあがれ日本・太陽の党との合流を批判された日本維新の会は50議席以上を確保した。
日本維新の会は今後、大阪の利益を第一に考える議員とそれ以外の地域の議員による政党内での対立に悩むことになると予想される。圧勝した自民党も含め、選挙後も依然として政党内での地域間の対立は重要な問題として残るだろう。
【初出:2012.12.1「週刊東洋経済(新流通モンスターアマゾン)」】
※掲載後の総選挙結果を受け、一部表現を改めたところがあります
(担当者通信欄)
離散集合を繰り返し、だんだんつかみどころがなくなっていった今回の「第三極」、有権者は投票先に悩み、投票率は戦後最低の59.32%。無効投票率の高さのニュースも気になります。
今回はいつになく投票所が混みあい話題になりました。その行列も投票用紙を手にしてなお、書きあぐねた有権者の心情のあらわれだったとしたら、と思わないでもありません。都内に関しては都知事選の同時実施など事務的な部分が大きいのでしょうが。
さて、そんな衆院選を終えて、砂原庸介先生の「政治は嫌いと言う前に」連載第3回は2012年12月24日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、2013年大予測)」に掲載です!
2012年の選挙は11月16日、突然の解散表明から始まりました。その「解散のタイミング」が帯びている重要性を考えます!
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