小選挙区制が二大政党化を促進?
「第三極」の議論の前提となっているのは、「小選挙区制が二大政党化を促進する」ということだ。
さらに言えば、「二大政党はしだいに政策を収斂させるから、そこに二大政党とは異なる政策的特徴を強調する『第三極』のアピールする余地がある」と理解されているのではないか。
しかし、国際的な比較研究を見ると、小選挙区制が二大政党化を促進するという傾向は明らかではない。確かにアメリカでは、小選挙区制の下で民主党と共和党という二大政党が圧倒的な存在感を誇っている。
だが、もともと二大政党制に分類されていたイギリスやカナダでも最近は多党化が進んでいる。極端なのはインドで、小選挙区制でありつつも、国会で議席を占める議員たちの所属政党は30以上を数える。
小選挙区制における多党化については、政治学者のプラディープ・チバーとケン・コールマンが、興味深い指摘をしている。
まず、小選挙区制の影響を受け、個別の選挙区ごとの候補者数は2人へと収斂していく。しかし、だからといって、議会全体までもが2党に収まるとは限らない。それを表現したのが図だ。
A国では議会全体でも選挙区でも二つの政党が対立している。対して、B国では選挙区で二つの政党が対立していても、議会全体では多くの政党が乱立することが示されている。
彼らによれば、B国のような状態になる要因として重要なのは地方政治の存在である。全国的な支持が広がらない政治勢力であっても、特定の地域で強い支持を受けていれば、その地域の代表として国の議会に議席を持つことは十分考えられる。
イギリスには、スコットランドのみで支持を広げるスコットランド国民党があるし、カナダでもケベック州を拠点とするブロック・ケベコワが連邦議会に多くの議席を持つことがある。インドでも、多くの地方政党が国会に議席を有する。
小選挙区制は、確かに候補者を2人に収斂させるという性質を持つ。だが、選挙区で唯一の代表を選出するという性質を伴っているため、その選挙区特有の利益を実現しようとする代表が選ばれるのも不思議ではないのだ。
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