ダイソン、美容家電で王者パナと本気の対決 今度は「ヘアドライヤー戦争」が勃発

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2000年代後半、ナノイーブームを巻き起こした、パナのヘアドライヤー。パナの美容家電の中でも売上高は大きい(会社提供)

パナソニック全社で見れば、販売規模は大きくはないものの(美容家電事業の売上高や利益は非公開)、「女性層との接点や海外展開の足掛かりになるという点で大事な位置付け」(スモールアプライアンス商品部の岡山晃久部長)としている。

中でもヘアドライヤーは、2000年代後半に「ナノイー」でヘアケアできるドライヤーを発売してから支持を集めた。美容家電の中では、売上高が最も大きい製品に成長、利益率もシェアも高い同分野は、パナソニックにとって重要分野だ。その地位を揺るがしかねない、ダイソンの参入に対する危機感が、冒頭の本間専務の発言に繋がっている。

ヘアドライヤーといえば技術的にはもはや成熟市場。そこにあえてダイソンが参入を決めた理由は、掃除機で培ったモーター技術を生かせると考えたため。既存のヘアドライヤーは、ヘッド部分にモーターがあり、L字型のデザインのものがほとんどだ。しかしダイソンでは、自社開発の小型モーターを”持ち手”の部分に搭載することで、スリムな形状ながら、風量では既存品に勝る新製品を開発した。羽根なし扇風機を思わせる、ダイソンらしいデザインに仕上げている。

掃除機、扇風機の次に、三たび旋風か

ダイソンは日本での勝算について、「消費者が商品を買うとき、よい技術、よい機能のものを選ぶ。日本の消費者の見る目は確かだと私は信じているので、きちんと選択してくれると思う」(ダイソン氏)と、余裕を見せる。対するパナソニックも、「長年得てきた信頼がある。他社への対抗ということではなく、今後も愚直にやっていく」(岡山部長)との構えだが、夏に向けてマーケティングを強化するなど、王座死守に動く。

掃除機や扇風機で、高価格帯を席巻してきたダイソン。そのダイソンに、何度も痛い目に遭ってきたパナソニックは、今回こそ一矢報いることができるのか。両社のメンツをかけて、ヘアドライヤーを巡る熱い戦いが始まった。 

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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