発送電分離、今の議論は拙速すぎる 論争!発送電分離

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ただ現状、技術進歩の裏付けがないまま、欧米でやっているから日本でもという理由で分離を進めることは、電力の安定供給に支障を来す懸念が残るため慎重であるべきだ。

技術進歩と政策のスピードを合わせよ

――将来的に望ましい分離のあり方は。

機能分離であれ、法的分離であれ、まずは設置が決まっている全国的なISOをしっかり機能させることが重要だろう。特に、予備力確保の効率化については全国的なISOを通じた広域的な運用によって可能となっていくと思われる。その先の問題として機能分離がいいか、法的分離がいいかは、海外の事例から見ても今すぐ適用できる最善の策があるわけではなく、判断することは現時点では難しい。全国的なISOの運用や技術進歩の状況を見ながら、次のステップを考えるということではないか。

――ステップ・バイ・ステップというのは、どれくらいのタイムフレームで考えていますか。

欧州の改革経緯を見れば10年以上のスパンということになるが、技術進歩のスピード次第ではもう少し短期でできるかもしれない。いずれにしても、技術進歩と政策のスピードを合わせることが重要だと思う。

――公的管理下にある東京電力から所有権分離を含めた発送電分離を進めるべきとの意見があります。

東電の今後の改革の進め方についてさまざまな意見があることは承知しているが、あまりにも考えるべきファクターが多すぎて、何が最善の道なのかを判断することは難しい。事実上、国の管理下に入っているので、民間企業と同様に考えることはできないし、賠償負担についても国がどこまで関与すべきかという議論もある。

――今のところ東電は、法的分離に沿った形で持ち株会社の下で発電、送電のカンパニー制を導入する方向ですが、これについては。

安定供給をどうやって担保しながら組織改革をしていくかがいちばん難しいところだろう。東電を特例として「1国2制度」のような方向へ進んでしまうのか、何がベストなやり方なのか、なかなか判断するのが難しい。

――最後に、エネルギーミックスについてどう考えていますか。

食糧も同じだが、やはり国益、エネルギーセキュリティを考えた議論でなければ非常に危ういと思う。電力やエネルギーは産業の根幹であり、これまでは低廉で安定的な電力があったのでさまざまな産業も発達してきた。日本が将来にわたりどうやって生き残っていくのか、政策決定に携わる人たちがしっかり考えて決めていけばいい方向に行くのではないか。

(撮影:尾形 文繁)


 

中村 稔 東洋経済 編集委員
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