票稼ぎの郵政改革に金融庁が「待った」 政策に翻弄される郵政問題

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一方で、西室委員長は同日の記者会見において、「あの範囲であれば、最終的な判断に影響はない」と述べている。聞きようによっては「大したことではない」と受け取れる発言だ。

その直後、中塚一宏金融担当相は不払い問題について「誠に遺憾であり、重大なこと」と話した。両者の認識には明らかに温度差がある。

日本郵政の新規業務参入について、次の焦点になるゆうちょ銀のローン取り扱いについても、すんなり認可されることはないだろう。中塚金融担当相は「(金融庁内の)審議はほとんど進んでいない。検証すべき項目は多い」としており、認可の結論を導き出すのはそうとう先になるという考えを示している。民営化委は12月12日のヒアリングと審議を経て「今年中には最終判断する」(西室委員長)方針だが、金融庁がこのタイミングで銀行法上の認可を与える可能性はないといって間違いない。

政府内でこのような不協和音が生じたのは、そもそも郵政民営化の枠組みにまずさがある。それを際立たせているのは、総選挙目前という政治的事情だ。

民主党連立政権下において郵政民営化見直しの牽引役となった国民新党では、下地幹郎郵政民営化担当相が一気に新規業務の認可に前のめりになった。民主党でも「樽床伸二総務相が認可の姿勢を積極化させた」(同党議員)という。

その背景にあるのは、特定郵便局長会に象徴される全国の郵政票だ。総選挙を12月16日に控え、票の取り込みに向けた動きが活発になっており、日本郵政の問題は政争の具にされた。

今回は政治圧力を金融庁が突っぱねた格好だが、総選挙後はいかなる展開になるのか。少なくとも、郵政問題から政治臭を払拭できる見込みは乏しい。

(撮影:尾形文繁)

週刊東洋経済12月15日号

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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