宇宙飛行士が「課長」ってどういうこと?

スーパーサラリーマンでなければ、宇宙には飛べない

星出氏と、国際宇宙ステーション(ISS)第32次長期滞在クルーたち。15カ国から選ばれた宇宙飛行士が集まった多国籍チームなのだ。  (出典:JAXA/NASA)

「晴れ舞台」の前には長い人で10年にもなる地道な日々がある。世界を回り、訓練を重ねながら多国籍チームと信頼関係を築き、予想されるトラブルとその対処法を共に洗い出し、体にたたき込む。

こうしてチーム力を鍛えたうえで「現場」である宇宙に飛ぶのだ。

そして宇宙でも、世界中の研究者たちが提案した実験や観測を行うなど、チームの目標達成に貢献する。

つまり、雲の上の存在に見える宇宙飛行士も実際は、マネジメントの決定に従い、他国や他部署との連携に四苦八苦しつつ現場を回す「中間管理職」なのである。

そんな現代の宇宙飛行士に必要とされる能力は、主に8つの資質に集約される(左下の表を参照)。ISSに参加する各国の宇宙飛行士や訓練担当、精神心理支援担当者らが、数年かけて議論したNASAの「クルークライテリア」(理想の宇宙飛行士像)を元にJAXAが定めたものだ。チームワーク、リーダーシップ・フォロワーシップ、コミュニケーション能力、異文化対応、状況認識などがあげられている。

これらの資質は、ビジネスパーソンに求められる能力となんら変わらない。一芸に秀でるより、バランスよくこれらの能力を備え、協調性に長けていることが求められる。

だからこそ宇宙飛行士の仕事術には、「一般企業の課長さんに役立てていただけるノウハウがたくさんある」と若田飛行士は力説するのだ。

約4カ月間の宇宙滞在を終え11月19日に帰ったばかりの星出彰彦宇宙飛行士は、帰還10日後に開かれた記者会見で「2回目の宇宙飛行から帰って感じるのは『日常の延長』だったということ。宇宙は『出張』で行く場所であり、帰ってきてまた行く場所。もはや宇宙飛行も普通のことになってきた」と語っている。

星出飛行士の出張中には、3回の船外活動が行われ、世界初の国際宇宙ステーションからの小型衛星放出、日本の貨物船「こうのとり」や米民間企業の貨物船などのドッキング・放出、日本や他国の多数の宇宙実験などをこなし、超多忙の日々を送った。だが「驚異的な段取り力」で仕事を前倒しに進め、余裕さえあったとJAXA関係者の評価は高い。

そして語学力は日本人飛行士の中でもピカ一。米国人でさえ「アキ(星出飛行士のニックネーム)は私より英語がうまい」と評価するほど。だがグローバルチームで仕事をするコツを星出飛行士に尋ねると、

「結局は人と人で国籍は関係ない。チームの欠けているところを見つけて補うことを意識した。自分がチームでどういう役割を担えるかが重要です」と気負いがない。

世界の舞台で戦い、勝ち抜き、宇宙という職場で成果を上げる宇宙飛行士たちは、いったいどのように思考し、勉強し、行動するのか。この連載では、旬な話題を取り上げ、宇宙飛行士たちのインタビューを交えながら、そのノウハウを掘り下げていきたい。

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