アコーディアは週明けにも強力な対抗策か PGMの買収提案に「留保」

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 ホワイトナイト、大幅増配…対抗策の中身は

TOBを防ぐためにアコーディアが打ち出すことのできる有効な手段の1つが、PGMの買い付け価格よりも株価を上げてしまう施策を打ち出すことだ。PGMよりも高い買い付け価格、あるいは同じ買い付け価格でも50.1%などの上限を設けずに対抗TOBを行うホワイトナイト(買収を仕掛けられた企業に取って友好的な第三者)を見つけることができれば、それは有効な対抗策の1つになりうる。

もう1つは、アコーディアが今回のTOBに先立つ10月31日に、今13年3月期の配当予想修正発表とともに明確に打ち出した株主還元策の延長線上にあるものだ。

アコーディアは08年3月期にそれまでの無配から1000円配当を開始。11年3月期までは「安定配当」方針で1000円配を維持してきた。しかし、前12年3月期からは「連結配当性向20%メド」に方針を転換し1200円配へ増配。10月31日の発表では配当性向をさらに「連結配当性向30%メド」に引き上げ、1600円配への増配を打ち出した。

配当性向とは1株当たりの純利益に対する1株配当の割合を指す。アコーディアの今期の1株当たり純利益は5000円強。大きな成長の見込める業界であれば、内部留保を大きく確保し将来の成長に向けた投資を行ったほうが株主価値の増大につながりうるが、市場の成長が見込みにくいゴルフ場業界では、株主還元を手厚くすることで高株価を維持する戦略のほうが投資家には分かりやすい面もある。

アコーディアは、これもTOB発表前の11月1日に開いた今第2四半期(12年4~9月期)決算説明会で、配当の成長や自己株の取得を軸とする株主還元に対して、キャッシュフローを優先的に配分する方針を明らかにした。今回のTOBがなかったとしても、株価対策の一環として、連結配当性向メドを30%からさらに大幅に引き上げるような施策を打ち出すことは十分ありうる。

とはいえ、TOBに対するアコーディアの強力な対抗策をマーケットが期待していた中での、ひとまず「留保」の意見表明。週明け12月第1週のアコーディアの株価は、具体的なTOB対抗策が見えるまで、落ち着かない動きが続くことになりそうだ。

 

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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