(このひとに5つの質問)原田泳幸 日本マクドナルドホールディングス会長兼社長兼CEO
都内のFC4カ店でサラダの調理日時改ざんや、賞味期限切れ材料の使用が発覚したマクドナルド。原田泳幸CEOに問題点を聞いた。(『週刊東洋経済』12月15日号より)
FCはどこも収益上向き 悪くなったなら自己責任
1 衛生管理の不祥事は外食産業にとって致命傷。システム面の強化などをどう考えるか。
これだけ大きくメディアに出て、全国のお客様や社員、ビジネスパートナーなどに心配をかけた。今はオーナー個人の責任追及よりも、皆さんにどう対応するかがいちばんの優先順位。会社としての反省は教育のあり方。テクニカルなことが足りなかったというよりも、「作業」は理解していても「仕事」として理解しているかをもっと教育していかなければならない。
2 今回の不祥事ではFCオーナーが現場を把握していなかったが、管理体制の見直しは。
発覚から1週間経つが、FCのトレーニングや監査システムを強化するといった具体策はまとまっていないのが正直なところ。発覚後、早急に全国のオーナーを集めて「決起集会」を開き、このようなことは二度と起こさないとの誓いを新たにした。報道後また問題が起きたら自殺行為に等しい。FC拡大戦略は単なる拡大ではなく、マネジメントの質や財務の向上も目指している。いいオーナーにはお店をたくさん持ってもらうことがやっぱり正しいと確信した。
3 トップ就任後、マクドナルド本体の収益は拡大しているが、店舗の利益を削るクーポン券の多用などでオーナーは疲弊しているとの声も聞く。
クーポン券の話は1万回も聞いていますよ。353名のオーナーを10名ずつに分けて3時間のワークショップを行っている。私が説明すると今の戦略をみんなが絶対理解してくれる。「何だったらワークショップを見ますか? 」というくらい堂々と議論できる。私が社長に就任する前はそういうコミュニケーションがなかった。FCのキャッシュフローも確実に上がっている。私の就任前より悪くなった人がいれば自己責任ですよ。これまでオーナー100名が撤退した。昔がよかったと言われてもコンビニがなかった時代とは環境が違う。
4 フランチャイズ方式は商標やノウハウを本部が提供する代わりに店舗投資はFCが行う。改装の要求を強めているが、FCは負担に耐えられるか。
改装は負担ではなく、機会点(タイミング)をものにするということ。改装すれば売り上げが2割上がるとわかっていても、1~2店の運営だけではキャッシュフローが限られる。FCオーナーは10店といった規模で運営して7~8年に1回は改装を行わなければ、競合店の改装によって顧客を失ってしまう。
5 今回の不祥事で成長戦略を緩めることはあるか。
ありません。もっと加速したい。(本部だけでなく)FCオーナーも含めてそうしなければならないと思う。
(書き手:山本亜由子、井下健悟 撮影:尾形文繁)
はらだ・えいこう
1948年生まれ、東海大学工学部卒業。アップルコンピュータの日本法人社長や米国本社副社長を経て2004年2月に日本マクドナルド副会長兼CEO就任。05年3月より現職。西友の社外取締役も兼務。
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