【渡邉美樹氏・講演】情熱と実行力のリーダーシップ(その5)

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東洋経済主催セミナー「Leaders Conference 2008」より
講師:渡邉美樹
2008年2月12日 ロイヤルパークホテル(東京)

その4より続き

●土の中で命の連鎖が止まる

 22歳の3月に日本に帰り、「24歳の4月1日に社長になる」と夢に日付を入れました。それから半年間は経理の勉強。社長はやっぱり財務知識がなければいけませんから、経理会社に入りました。1年間、佐川急便でトラックの運転手をしました。初任給43万円、手取り37万円、生活費12万円、毎月25万円を1年間貯金して、計300万円を貯めました。当時の有限会社の最低資本金です。そして何も知らない外食界での準備を半年間して、そして24歳の4月1日、計画通り、『つぼ八』というチェーン店の社長になったわけです。
 その後、今度は『和民』というチェーン店を作りました。それは、手作りで安全で安心で、そしておいしくて、自分の子どもがそこにいたら食べさせたいようなものをぜひ出したいという思いを、自分の中でどうしても断ち切ることができなかったからです。

 当時、レモン・サワーというのが流行していました。レモン半分もしくは1個を、お客様自身に絞っていただくわけです。当時は、絞り器なんてかっこいいものはありませんでしたから、手でぐっと絞って……それをどうするかというと、お客様は中に入れてしまうんです。これはゾッとするんですよ。レモンには光らせる薬がいっぱい付いていますから。でも、言えないじゃないですか、「お客様、レモンを中に入れないでください」なんて。「そんな汚いものを出しているのか」ということになりますからね。それで私が1号店の店長として何をしたかというと、夕方4時から4時半ぐらいまで、ずっとレモンを洗ったんです。お客様が中に入れてもいいように。

 さらに、13店舗をかかえるオーナーになったときには、野菜も自分たちで仕入れるようになりましたから、農家の方を訪ねていって「安全なもの作ってくれ」とお願いしたんです。でも、なかなか安全なものが無いんですよ。ある農家に行ったら、指の先から足の先まで宇宙服みたいな格好をした人が、目だけ開けて農薬を撒いていたんです。その目は真っ赤でした。私が「そんな体に悪いもの撒いて大丈夫ですか?」と聞くと、「これを撒かないと商売にならない」と。その後、「せっかく朝早く来たんだから、朝飯食っていけ」と言われ、一瞬ちゅうちょしましたもんね。こんな農薬だらけの野菜は嫌だなと。すると、そのとき私がちゅうちょしたのをぱっと見て、その農家の方が「大丈夫。これは撒いてないから」と言ったんです。「自分たちが食べるのものには撒いてない」と。

 私はその後、日本中を探しまわりました。でも、安全なものが見つからない。農薬全部を否定するわけではありませんが、私は怒りを感じました。命って循環だと思うんですね。命がつながって人間の命に入り、また命になる。だから土の中に命が無いと、命の連鎖が止まるんですね。命がつながっていない食べ物は、工業製品であって食べ物ではないと思っているんです。だからどうしても有機でやりたかったんですね。それなら自分たちでやるしかないわけです。だから私は、今日のテーマの「情熱と実行力のリーダーシップ」にあるのは、「おれがやらねば誰がやるんだ」という使命感だと思うんですね。
その6に続く、全7回)

渡邉美樹(わたなべ・みき)
1959年神奈川県に生まれる。1984年に有限会社渡美商事を設立し、経営が不振だった『つぼ八』の店舗を買い取る。24歳にしてフランチャイズ店オーナーとして起業する。1986年、株式会社ワタミ(現ワタミ株式会社)を設立。現在は外食、介護、農業、環境事業を展開するほか、NPO法人の設立や神奈川県教育委員会の委員を務めるなど、多彩な分野でその才を発揮している。
詳しくはhttp://www.watanabemiki.net
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