【渡邉美樹氏・講演】情熱と実行力のリーダーシップ(その6)

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東洋経済主催セミナー「Leaders Conference 2008」より
講師:渡邉美樹
2008年2月12日 ロイヤルパークホテル(東京)

その5より続き
 今から8年ほど前から農業を立ち上げ、現在は約488.5haになり、日本最大の有機生産法人になりました。牛は1000頭、鶏は3000羽います。私は今、学校や病院など、16~17つの法人に携わっていますが、唯一農業だけは黒字にできない。来年は絶対やりますけど。最大の問題は日本と海外の価格差と、安全・安心に対してお客様がお金を払わないこと。それらに対してお客様がお金を払ってくれれば、経営はすぐに成り立つわけですよ。黒字ではないということは、社会から必要とされてないということ。この自由主義社会においては、黒字でなければいけないんです。

 海外との価格差を乗り越えて、なおかつ日本の農地をしっかり守るためには、経営、資本、規模が必要なんですよ。70歳を超えた農家の方々が頑張ってくれているのはありがたいのですが、その方々を守ることによって、日本の農業は弱くなっているわけです。後継者がいなくなり、結果として荒れ果てた農地だけが残っています。これが今の日本の農業。だから欧米にならうように大規模で有機、そして株式会社にして、そこに徹底的に国が応援するしかない。その結果、この会社はそんなに大儲けするわけではなく、国民のために食料自給率を上げることができるんです。

●「ありがとう」を集める

 話は変わりますが、今から3年半~4年前、病院の経営をどうしてもと頼まれて携わった後、私は初めて介護と向き合いました。特養老人ホームってご存じですか?これは自治体や社会福祉法人がやっている施設ですが、要するにお金のある人も無い人もどんどん入れている施設で、今は30何万人待ち。全然足りていないんです。
 民間でもいい施設はないのかと探すと、入居金が高い老人ホームはいっぱいあります。でも、1000万以内で入れるいい施設は見あたらないんです。それで、我々は介護にチャレンジをしました。「じいちゃん、ばあちゃん、どうするつもりだ」という怒り……ご飯はエサみたいに渡す、自動食器洗い機みたいなお風呂に入れる、そんな光景を見ていて、この国は何だと。自分たちがこの国で幸せに暮らしているのは、このお年寄りがいるからだろうと。

●思いをカタチにするための仲間

 私は母を10歳で亡くしました。父も6年前に亡くなっています。もしこの父や母がいたら、どうしたいかということを形にしたいと思いまして、15棟ある施設を93億円で買収しました。実は、私は会社を買収したことはなかったんです。会社って売ったり買ったりするものではないですよね。会社って命じゃないですか。命を売ったり買ったりできないと思っていますから。しかし介護における規制がありまして、買収しないと認可が下りませんでした。そこで私は働いている500人の方に言いました。「私は、自分の親が入るような施設を作りたい。介護は全くの素人だ。でも、その思いだけは誰にも負けない。だから一緒にやってくれませんか」と。
 我々は今、4大ゼロを推進しています。おむつゼロ、経管食ゼロ、特殊浴ゼロ、そして車椅子ゼロ。しかし、車椅子から歩くということは、我々にとっては大変な負担なんです。すると、あるとき30~40人の働いている方々が来られて「あなたが来たお陰で、施設のみんなは幸せになりました。でも私たちの仕事は本当に大変になりました。私の幸せはどこにあるんですか?」と聞いてきたんです。私は言いました。「おいしそうにご飯を食べているご入居者様のお顔は、あなたにとって幸せではありませんか?檜風呂に入りながら鼻歌を歌われている、あの方はあなたにとって幸せではないのですか?」と。そうしたら、皆さん黙ってしまいました。「そんな幸せを重ねられる人と一緒に仕事がしたい。もしその幸せとあなたの幸せが別ならば、どうぞ、会社を辞めてください」と私は言いました。会社というのはお金儲けの手段ではない。思いをカタチにするため、仲間が集まっているんです。この価値観だけは一緒にしたいんだと。
 結果として、3割以上の方が辞めていきました。仕方のないことだと思っています。しかし、その後たくさん人に集まっていただいて、やはり方向性としては間違っていなかったと思うわけです。
その7に続く、全7回)

渡邉美樹(わたなべ・みき)
1959年神奈川県に生まれる。1984年に有限会社渡美商事を設立し、経営が不振だった『つぼ八』の店舗を買い取る。24歳にしてフランチャイズ店オーナーとして起業する。1986年、株式会社ワタミ(現ワタミ株式会社)を設立。現在は外食、介護、農業、環境事業を展開するほか、NPO法人の設立や神奈川県教育委員会の委員を務めるなど、多彩な分野でその才を発揮している。
詳しくはhttp://www.watanabemiki.net
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