■ その3 「日本の電機の経営はダメ」
今回、パナソニック、シャープなどのエレクトロニクス企業の苦境について、「お公家さんみたいな企業とかは、これ(撤退)をやりきれずに致命傷までいって大赤字で倒れる」と厳しい発言をしているが、昔も電機系の会社に厳しかった。96年10月には次のような発言をしている。
「転換社債を除いた有利子負債は2200億円。これは年間のフリー・キャッシュフローの3年分しかないわけです。わずか3年ですよ。ものすごい現金収益力を持っており、有利子負債は少ないくらいです。同じ心配をするならNECとか富士通とかを見てくださいよ。半導体の工場だけで1000億円、2000億円の投資を毎年しているわけでしょう。いったいフリー・キャッシュフローの何倍の有利子負債を持っているのか、ああいう会社こそ心配するべきでしょ」
■ その4「そのやり方は失敗したという結論を出している」
また過去の経営ミスについても、迷うことなく「あれは失敗」と率直に認める謙虚さも昔から変わらない。今回のインタビューでは「100%子会社にした場合、経営にはコミットをしないとダメだ。口出しをしないというやり方は失敗したという結論を出している。たとえば日本テレコムでは最初、もともとの経営陣に任せてしまったのは失敗だった」と吐露した。2000年9月29日のインタビューでも失敗を認めている。売却益を出せないまま処分したキングストン・テクノロジー株について「失敗」と認めていた。
「キングストンは失敗ですね。我々は国内でメモリカードみたいなパソコン間連部品をいっぱい売っていましたからね、宮内部隊で。ですから、ソフトウエアだけではダメなんだ、その周辺機器だとか、ハードウェアも品揃えとして相当強化しないといけない、と考えていた。中でもメモリカードというのは大事だという、そんな理由はいろいろとあったんです」
■ その5 「ベライゾン、AT&Tは高すぎるから買えない」
最後に。「グローバル展開についてはボーダフォン日本法人を買収したときから考えていた」と発言しているが、実は研究を始めたのはもっと古いかもしれない。
孫社長が通信事業への感心を持ち、実際に挑戦を始めたのは99年のこと。この年の8月に東京電力、マイクロソフトとの3社合弁で無線通信のジョイントベンチャー「スピードネット」を設立している。
その直後にインタビューした際、私は「世界を制覇するのが目的なのでしょう。だったら、アメリカの実力者との連携が必要。AT&Tのマイケル・アームストロング会長(当時)と話をするべきではないか」と振ってみた。
「確かに、アームストロングさんはゴルフ友達です。でも、そんな話はしていませんからね」
今、振り返れば、この当時から、米国の通信の事情について、ゴルフをやりながら聞きまくっていたのかもしれない。
この連載では、長期にわたってウォッチしてきたからこそ書くことができる、IT・ネット業界に関する「目からウロコ」のコラムを週一ペースでアップしていきます。ご愛顧のほど宜しくお願いいたします。
(イラスト:ぼへぼへ)
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