一方、内定者からの辞退を企業が拒否することはできません。日本国憲法22条1項では「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と職業選択の自由を保障しています。新卒の就活で複数企業の内定を取得し、その中の一社を選択することは社会通念上認められているともいえます。
また、民法627条1項では「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と労働者側からの労働契約解約の自由が保障されています。
なお、民法627条1項は各当事者となっていますが、使用者側からの解雇については、労働基準法、労働契約法などが民法の修正を行っています。
しかし、土壇場での辞退は困りものです。実際には難しいと思いますが、内定辞退があまりにも信義則に反する場合は損害賠償の対象となりかねません。複数の内定を取得した場合、就職するつもりのない会社には早めに内定辞退の申し入れをすべきでしょう。何事もご縁を大切にすることで運も生まれてきます。誠実に対応することで、もしかしたら将来、ビジネス・チャンスが生まれるかもしれません。
内定中の研修に参加義務はない
内定中の研修は必ず出席しなければならないのでしょうか?内定関係における信義則から、必要最小限度の研修は肯定されるという見解も有力です。しかし本来、学生の本分は学業にあります。研修に追われ学業がおろそかになり、卒業できないようでは本末転倒です。
内定者には就労義務はなく、研修は学生生活に支障のない範囲で、参加は任意であるべきです。もし、業務命令の場合は研修であっても賃金が発生し、研修中のケガには労災保険が適用されなければなりません。
東京地裁平成17年1月28日判決(宣伝会議事件)では、「入社日前の研修等について同意しなかった内定者に対して、内定取消しはもちろん、不利益な取扱いをすることは許されず、また、一旦参加に同意した内定者が、学業への支障などといった合理的な理由に基づき、入社日前の研修等への参加を取りやめる旨申し出たときは、これを免除すべき信義則上の義務を負っていると解するのが相当である」と判示しています。
1.採用内定の法的性格は確立されていない。
2.労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
次回は求人票と勤務条件について取り上げます。
1は×です。判例上「始期付解約権留保付労働契約」という考え方が確立されています。2は労働契約法3条4項の条文で、○です。
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