矛盾だらけの郡山市放射性物質除染事業 330億円投入でも効果疑問

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また、中間貯蔵施設や市内での仮置き場が決まっていないことから、除去した汚染土壌は自宅の庭に仮埋設または地上保管を余儀なくされる。

 市では「地下埋設による遮蔽効果は約98%。地上保管の場合でも、プラスチックの容器をコンクリートで覆うため、埋設時と同様の遮蔽効果が期待できる」と「安全」を力説しているが、搬出先が見つからなければ長期にわたって汚染土砂が自宅の敷地内に留め置かれる事態になる。

住民から東電に厳しい意見相次ぐ

 10月24日に開催された説明会では、住民から厳しい意見が多く出た。
「汚染土砂を地下に埋設したまま、自宅を売却したり相続を行わなければならない場合、地価下落に対する補償や相続税の評価はどうなるのか」。
「ベランダやバルコニーの放射線量が高くても除染をやらないというはおかしいのではないか」。しかし、市側は、「(地価下落への対応や相続税評価については)明確な答えは持ち合わせていない」「(ベランダやバルコニーの除染は)ご自身でやっていただきたい」といった回答に終始した。                  

除染実施を示す公園の看板。地下に汚染土砂が埋設

 10月29日の説明会でも「ベランダは自分で除染しろというが、どうすればいいのか」「東京電力への除染費用の賠償請求については個々人に任せずに、市で責任を持って取りまとめてほしい」という声も上がった。

不可解なのは、東京電力が住宅地の除染作業にほお被りを決め込んでいることだ。東電は市による除染以前に、住民の手で実施した除染作業に対する賠償の方針について、いまだに明らかにしていない。そのうえ、今回の除染に関する説明会にも東電関係者は出席していない。郡山市は12年度を「復興元年」と位置づけているが、東電の責任を曖昧にして住民や自治体に責任を押しつけた形の復興は、早くも暗礁に乗り上げかけている。
 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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