台湾新幹線には「日本流DNA」が根付いている 現地取材で見えた!技術より重要な社員の質

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車内販売員は正社員。乗客の安全確保も担う

一方で、異なる部分もあった。駅ホームでの発車アナウンスがない。「アナウンスはコンコースで行う。ホームでお客様を急がせないための配慮だ」(左営駅の林副駅長)。乗り遅れそうな乗客がいる場合は、コンコースにいる駅員が無線連絡して、列車の出発を10~15秒遅らせることもあるという。

車掌による列車のドア開閉は、日本のような乗務員室でなく、客車のデッキで行う。車掌は1~12号車のどこにいてもドアを開くことができる。その一方で、700Tは、車掌室に窓がなく、運転台側面に乗務員用出入口がない構造になっている。日本では駅員に加え、車掌も車両から顔を出して安全確認を行うが、高鉄では駅ホームの3人が安全確認を行うことになる。

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清掃スタッフが乗務する。高鉄独自の試みだ

車内のサービス体制はどうか。販売員がワゴンを押しながら販売するスタイルは日本と同じ。日本では販売員は別会社が担当する例が多いが、高鉄の販売員は正社員だ。クルーの一員として、緊急時には運転士、車掌、販売員が共同して対応する。東海道新幹線では1列車に車掌が3人乗務するが、台湾新幹線では車掌は1人という場合が多い。それだけに1列車に2~3人が乗務する販売員の役割は重要だ。

販売員や車掌だけでなく、大きなゴミ箱を引っ張った女性スタッフも通路を行き来し、乗客から空の弁当箱やゴミを回収している。これは日本にない、高鉄独自のサービスだ。

車内清掃も日本流

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駅折り返し時の素早い清掃は日本とまったく同じ

こうしたスタッフを車内に常駐させることは、コスト増につながる。しかし、列車が終着駅に到着するまでに車内のゴミがきれいに片付けられていれば、到着後の車内清掃の負担が軽減される。トータルでは大したコスト増ではないかもしれない。

列車が終点に到着すると、白いユニフォームを着た清掃スタッフが車内に乗り込み、てきぱきと清掃を始める。日本でおなじみの光景が台湾でも再現されている。「清掃スタッフの指導係は日本で研修を受けました」(高鉄広報)。ここにも日本流が根付いている。

終点の左営駅には構内に運輸所が設けられている。運輸所とは運転士、車掌、販売員の詰め所である。

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乗務員の出勤時には時計の時刻を指差喚呼でお互いに確認

運輸所のドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは高鉄の大きなロゴ。出勤点呼や乗務点呼の窓口だ。出社した乗務員は出勤点呼時に血圧検査、アルコール検査を行い、当直者から行路票や携帯端末を受け取り、行路の確認や注意事項の伝達を受ける。車掌は釣り銭も受け取る。

点呼に続き、列車に同乗する車掌と販売員によるクルーミーティングが行われ、乗務の注意点や携帯品の確認、各自の時計が正確かどうかの確認を行う。出発前にも乗務点呼を行い、出発の最終確認をする。

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