台湾新幹線には「日本流DNA」が根付いている 現地取材で見えた!技術より重要な社員の質

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運転士の養成は8カ月、1326時間かけて行われる。現在、144人が運転士の免許を取得している。

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運転シミュレーターを使って運転業務を解説してもらった。日本とほぼ同じ仕様だが、モニター表示は中国語と英語の両方があり、好みに応じて切り替えることができる。開業当初は英語表示を選ぶ運転士が多かったが、最近では中国語表示を選ぶ運転士が多いという。

故障時には、その内容がモニターに映し出され、ボタンを押すと処置方法も表示される。一方、JR東海では、「処置方法は運転士に配布する冊子に記載されている」(広報担当者)。運転士は毎月の訓練時にマニュアルを読み込み、冊子に書き込みもできるので、迅速性、正確性を高めることができるという。高鉄でも冊子は運転士に配布されているので、冊子とモニターの双方で処置方法を知ることが可能だ。

続いて、運行指令所を見学させてもらった。常駐スタッフは12人。70~80人が常駐する東海道・山陽・九州新幹線の指令所よりも所帯は小さいが、ブースごとに輸送指令、運用指令、施設指令、電力指令などのスタッフがいる点は同じだ。

ITの活用では台鉄が優勢

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携帯端末に列車の運行情報が表示される

運行開始当初、指令員と運転士のやりとりは英語で行われていた。外国人の指令員や運転士がいたためだ。だが、3年目までに全員が台湾人スタッフに変わり、現在のやり取りは中国語で行われている。

台湾新幹線も日本並みの高い定時運行率を誇る。「予定よりも2分遅れて走行すると、指令から運転士に問い合わせを入れる」(任主任)。ちなみに東海道新幹線は「1分遅れると運転士は指令員に報告する。報告がない場合は指令員が運転士に問い合わせる」(JR東海)という。

一方で、ITの活用については、台湾が2歩も3歩も進んでいる。任主任が見せてくれた携帯端末には、行路票や乗務員名や顔写真、座席情報や列車の在線位置などがリアルタイムで表示されていた。あらゆる情報がデータで結び付き一瞬で表示される。さすが「電脳立国」である。

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車掌は車内でドアが閉ったことを指差喚呼で確認

桃園駅から左営駅に向かう途中の駅で、「輸送業務」を見学した。駅ホームには配置されているのは警備員を含め3人。列車の入線時には、ホームの安全に加え、列車や架線の状態を確認する。架線のささいな揺れ具合からパンタグラフの異常が発見されることもあるためだ。

列車が到着すると、駅員は停止位置や到着時刻、ドア開扉、側灯点灯などの確認をする。出発時はホームの安全確認、ドア閉扉、発車時刻、後部標識、線路、架線などを確認する。これらの作業は一つひとつ指を差し、声を出しながら行われる。安全を確認するためのこうした「指差換呼」は日本とまったく同じだ。

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