特別企画:ミドルリーダー座談会(上) 高度な思考・コミュニケーションとは
多くの場合、こちらにとっては特に新味のある内容ではなく、既に自分が済ませた分析、理解をなぞるプロセスだったりするのですが、「あ、この仕事は、事業全体の中で、こういう役割を果たしているんだ」と、部下の納得感が高まったり、視点を上げてあげたりすることが重要なのです。
さらに言えば、そうしたディスカッションは、なるべく他の部下も見ているところでする。そうすると、「あ、なんか・・・自分もちょっと考えないといけないのかな」と、全体にそういう空気感も醸成されていきます。
トップの意図を確認するうえでもフレームワークは有益
荒木:先ほど、“2つ上の視点”での解釈の精度を高めるために、一つには経験値がものを言うだろうという話が出ました。「解釈」というのはクリティカルシンキングの領域でも使う言葉ですが、この方法論につき、もう少し考えてみられればと思います。
たとえば社長や上の人が「今年は研究開発の年だ。R&Dにシフトだ」というキーワードを出したとします。それを自分のものにするには、具体的にどういったスキルや行動が必要になるのでしょう。「あ、俺は研究開発部門だからやばい。仕事が降ってくる。どうしよう」みたいな表層的な理解で終わらせないために。
井手:あるいは「自分は研究開発部門じゃないから関係ない。良かった」で終わらせないために?(笑)。
荒木:一つには、情報の非対称性というものはありますね。例えば、社長だけが参加したカンファレンスでの議論の内容やプロセスが思考に影響を与えた、というような。
戸津:(情報量や思考投入の時間が増える)トップの休み明けとか、マズいですよね(一同笑)。
荒木:ただ、仮に情報量が同じでも導き出される解釈が、どうしても異なってしまうという話が、先にもありました。情報をあてる前提というか、セオリーというか、経営フレームワークのような思考回路の組み合わせによって、アウトプットが出てくるんですよね。その思考のスタイルを合わせていくことは可能なのか・・・。
戸津:創業社長は色々なことを思いつきます。ただ、アントレプレナーには多かれ少なかれ似たようなところがあるのだと思いますが、この思いつきは、何の脈絡もない思いつきではないのです。
本人が頭の中に長らく培ってきた「もやもやしたもの」に何かがコツンと引っかかり、それまで皆が想像もしていなかったアウトプットが出てくるわけです。そういった特有の思考回路というのがあります。
結果、周囲はどこからそれが出てきたか理解できず、「へ?」となるわけですが、情報の非対称性を埋めるという意味ではまず、「何故ですか?」と質問するしかない。その質問に抜け漏れがないようにするためにフレームワークというのは有用であると私は思います。
「あ、競合を見てこう思ったんだ」、「お客さんにこう言われたんだ」、「知り合いにこう言われたんだ」、「社員にこう言われて気づきがあったんだ」といった要領です(笑)。全てに3Cを使えばいいという意味ではなく、思考回路を理解するきっかけを、自身が培ってきたフレームワークで探していくということは、よく行っています。
行動という部分については、まずは一度、話を聞いて「分かりました」と飲み込む。そうやって一度、持ち帰ってから、持てる情報を全て入れ、改めてアウトプットするという作業を行なっていく。で、それを絵にするなり文字にするなりして社長のところへ持って行って、「こないだのお話は、こういうことですよね」と聞くわけです。