特別企画:ミドルリーダー座談会(上) 高度な思考・コミュニケーションとは
飛行機の操縦に例えると、機長はレーダーと窓の外を見つつ、平時は基本的には何も働かない。ただ、もし想定外の天候不良などに襲われたら、迂回策を見出すために最大限、頭を捻る。一方、副機長は示された軌道を外さぬよう目の前のオペレーションに集中する。いかに機長の判断を実現するかというところのみに注力するわけです。
トップの意向を注意深く捉えるよう意識する
私は、そんな役割分担があってもよいと思っています。つまり、副機長に機長の仕事をさせないほうがオペレーションとしては効率的ですし、この場合、飛行機にとって重要な安全性は高まります。もちろん、業態とか、個々人のスキルセットに依りますが、上が「お前はこの分野だけ考えていろ」と仕切ることで、組織効率が向上するケースもあると思います。皆が、何から何まで考えようとして、足元が疎かになってもいけないかと。
荒木:なるほど。ちなみに藤井さんは、人材採用や育成において“2つ上の視点”、あるいは社長の視点に立つことは意識されていますか。もしされているとしたら、どのようにして経営の視界を把握しているのでしょうか。
藤井:まずは、トップの意向を注意深く捉えるよう意識しています。たとえば、ちょっとしたコミュニケーションのなかで出て来たキーワードなども逃さず、「あの言葉は『こういうことを実現してほしい』という意味なのかな」と解釈してみるわけです。
その際、大事にしている一つは、荒木さんが言われたとおり、戦略のセオリーに基づいて考えること。単なる言葉遊びにならないためにも、ロジカルに考える道筋は重要です。もう一つは、ものすごくベタですが、きちんと確認しに行く、ということです。
戸津:ご自身から聞きに行くのですか?あるいは、そうした場があるということでしょうか?
藤井:同じフロアにいますから普段から顔を合わせる機会も多いですし、また、当社の社長は育成に対して大きな関心を持っているのでコミュニケーションがとりやすい状況だということもあります。たとえば、人材育成に関する大きな方針は必ず社長に相談しに行きます。
「来年の新卒採用者の教育キーワードは、“主体性”で行こうと思いますが、宜しいでしょうか?」
といった具合です。繰り返しになりますが、情報を、勝手に想像して脳内でこねくり回すのではなく、戦略のセオリーに基づいてとことん考えた上で、躊躇せず確認する。待ちの姿勢になってはいけないと思います。
井手:コミュニケーションは、やはり重要ですよね。会社ごとに文化は様々ですが、上司から「お前、わかってないなあ」などと思われて評価を下げられないように、「ですよね」なんて相槌でうまくつなぎながら、さりげなく上司の考えを確認する。戦略論からは離れますが、そうした細かなテクニックは色々ありますし、とりわけ、そういうことが事業会社では必要とされるようにも思います。
藤井:競争環境などの変化に即応し、トップの考えも変化する、ということもポイントですね。気が付くと、半年前とは異なるテーマが重要になっていたり。