EUや中国向け輸出不振で3カ月連続赤字 【9月貿易収支】

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財務省は10月22日、9月分の貿易統計(速報・通関ベース)を発表した。それによると、貿易収支は5586億円の赤字で、3カ月連続の赤字となった。輸出が欧州市場の低迷を背景に4カ月連続で減少する一方、輸入は2カ月ぶりの増加を示した。

 9月の輸出総額は5兆3598億円で、前年同月比10.3%減。自動車、船舶、半導体等電子部品などが減少した。地域別では、EU向けが12カ月連続の減少で、同21.1%減と大幅減が続いたほか、景気減速が顕在化している中国向けも4カ月連続の減少で、同14.1%減。ともに自動車が減少し、EU向けでは船舶、電機計測機器、中国向けでは原動機や自動車の部分品の減少も響いた。中国同様、アジア向けも4カ月連続の減少(同8.3%減)となり、自動車、鉄鋼、鉱物性燃料などが減少した。

 唯一増加を示したのは、11カ月連続の増加となった米国だが、増加率自体は同0.9%増とほぼ横ばいまで鈍化している。鉱物性燃料や建設用・鉱山用機械、電池などが増加したものの、東日本大震災で供給が途切れた自動車の在庫積み増しが一巡したようで、ボリュームの大きい自動車は減少した。

 一方、輸入総額は5兆9183億円で、同4.1%増。品目別を見ると、原粗油、通信機、液化天然ガスなどが増加し、原発不稼働の中での燃料やスマートフォンなど通信関連が増勢。地域別では、米国、アジア、中国からの輸入が2カ月ぶりの増加となり、EUからは3カ月ぶりの減少となった。アジアは通信機や原粗油、石油製品など、中国は通信機、半導体等電子部品、バッグ類など、米国は航空機類の増加が目立った。

 財務省は同日に2012年度上半期(4~9月)の速報も発表したが、貿易収支は3兆2190億円の赤字で、3期連続の赤字だった。上半期はEU、中国向けの輸出低迷が響いた形だが、下半期に向けては中国の動向を注目するマーケット関係者が多い。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「中国の景気刺激策の効果が出てくる可能性があり、日本からの輸出改善が期待される。ただ日中関係悪化の影響というリスク要因も念頭に置く必要がある」と指摘している。

 

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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