「遊び人ヤンキー」が2020年の日本を救う 藤野英人と木下斉が「ヤンキーの虎」を語る
もう一つ、理由がある。それは、人口問題です。当時は、団塊世代が65〜70歳の年齢層にぴったり重なった時期だったんです。
65〜70歳というのは、最も人生を謳歌できる時期。消費できるし、意思もあるし、まだまだ健康で行動力も衰えていません。すばらしい時期なんです。ところが70歳を過ぎると、意欲がなくなってきて、好奇心もなくなってきて、消費をしなくなってきます。病気も増えますし、急に行動力が落ちてくる。
団塊世代が、65〜70歳という最も消費欲が旺盛な年齢層に突入したのが、アベノミクスのスタート時と重なっていたわけです。
ところが、昨年夏から、いよいよ団塊世代が70歳を超え始めました。これからも毎年1歳分ずつ失われていって、いずれみんな70歳以上になります。
マーケットの縮小で、虎同士の食い合いが始まる
木下 戦後最高のボリュームゾーンが、あと数年でいなくなってしまうということですね。

藤野 そうです。これは日本経済にものすごく大きな影響を与えます。今は、子どもの数は減っていますが、団塊世代が消費をしてくれているので、需要はまだあるんです。
ところが、あと2〜3年すれば、需要そのものが急激に落ちていきます。ここから、日本経済、特に地方経済の本当の危機が始まると思っています。
藤野 これから地方の総需要が大きく減ることは間違いない。すると、さすがにヤンキーの虎たちも影響を受けざるを得ないでしょう。
今、地方では、ヤンキーの虎が古参ビジネスからどんどんシェアを奪って大きくなってきています。ただ、マーケットが縮小し、それぞれの虎がある程度ひしめき合う状態になると、今度は虎同士での食い合いが始まると見ています。
木下 そもそも獲物が少なくなってくるんですよね。かなり厳しい戦いになる。しかも、需要側だけでなく、その獲物を取りに行くビジネスを作る仕組みを支える労働力も不足するから、供給側においても厳しい戦いになりますよね。
藤野 そう。それが2020年以降に起きるというのが、僕の予想です。さらに2025年くらいになってくると、厳しさを増してくる。
虎同士の食い合いになったら、広域連合みたいになると思いますよ。それぞれ縄張りを広げながら、相手を食って、連合をつくっていく。
例えば、コンビニのフランチャイズ事業をやっていた虎が、埼玉県の3分の2ほどを押さえるような巨大なフランチャイジーに育っていったりする。
こうして虎が集約されて、大規模な組織になってくると、大変なことが起こります。「本部」と「地方のエリアフランチャイジー」との力関係が逆転するんです。つまり、東京など大都市よりも地方が強くなってしまう。実際に事業を回す「手足」を持つ者が、主導権を握るんです。
地方のフランチャイジーが、本部に価格交渉をしてくることもあるでしょう。そうなると、東京に本部を持ち、地方に手足のないビジネスをしている企業は、やりにくくなるんです。