人気ラーメン店が奇抜なメニューを出すワケ ピンク色の鶏白湯は何を狙っているのか
人気ラーメン店で、これまでにはありえなかった奇抜なメニューが次々と登場している。大正3(1914)年に山梨県甲府市で創業し、100年以上の歴史を持つラーメン店の『直久』。東京・銀座のほか、新橋、フレンテ笹塚、水道橋などに店舗を構える老舗も、一風変わった限定メニューを打ち出した。
4月26日~5月31日までの期間限定(一部店舗のみ)で、DJ・音楽プロデューサーの須永辰緒氏とのコラボレーションで提供しているのは、カレーラーメン「華麗(カリー)なるスパイスそば 初夏の陣」(税込980円)。須永氏は1年でラーメンを500杯以上食し、特に10年以上にわたり、世に出回るあらゆるスパイスを舌で確かめ、理想のカレーラーメンの味を追求してきたそう。そこで同じくカレーラーメン構想のあった『直久』との共同開発が実現し、約3カ月を経て完成した。
もともと『直久』のラーメンは、名古屋コーチンの親鶏を身付きで炊きだしたあっさりとしたスープに、千葉の老舗『大高醤油』の本醸造「フジトラ醤油」を用いた醤油ダレを合わせたスープ、そして上質な小麦粉を使用した自家製麺からなる、昔ながらの「純鶏らーめん」、さらに豚の背脂などを加えた「直久 こく旨らーめん」が看板メニューだが、限定のカレーラーメンは通常のあっさりタイプとは、まさに正反対の味わい。鶏清湯のスープのほかに鶏白湯スープも合わせたコクのある1杯は、さまざまなカレースパイスを粉と香味油の双方を用いて香りと味を追求した真剣な味わいで、旬の枝豆とアボカドのジュレまで載る。
希望者にサービスでつく半ライスにスープをかければ、芳醇で爽やかなカレーライスも楽しめ、女性には「あずき入り杏仁豆腐」もサービスする。これが限定とはいえ、100年以上の歴史を持つ老舗の『直久』で提供することに驚く。
限定メニューという攻めの姿勢
ここに、昨今の人気のラーメン店の傾向を見出す事ができる。それはまず第1に「限定メニューの導入」という点だ。既存のラーメンに加えて、季節ごとなどの1杯を提供することにより、話題性を作る。どうしても日々のルーチンワークになりがちな仕込み作業に、新たな刺激を投入するという点で、スタッフのモチベーションを引き出すという側面も有する。
第2には「視覚に訴えるインパクトのあるメニュー」で攻めていくという点。限定メニューという意味合いからも、ビジュアル的に目に留まる商品でないと意味がない。そのためには彩りなどの美しさで構成する、ボリューム感たっぷりなどのインパクトを追求するといった作戦が重要視される。
そして第3に「一見すると違和感のある組み合わせ」だ。そこにはいくつかの傾向が見受けられる。たとえば従来のラーメンにはありえなかった食材を合わせたり、「鶏桃湯ラーメン」のような意外な彩りで完成させたりする。『直久』と音楽プロデューサーという異業種のコラボレーションもまさにそうだ。新進気鋭のお店にとっても老舗にとっても固定客を飽きさせず、新しいお客を呼び込む。奇抜な限定メニューにはそんな狙いが込められている。
(文・撮影 はんつ遠藤)
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