橋桁が崩落、横河ブリッジに何があったのか 最高益更新の中で最悪の事故が起きた

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ただ、作業員不足の一方、横河ブリッジHDはこの間、正社員数を抑制する方針を採ってきた。2011年3月期~2015年3月期の5年間、売上高は754億円から1027億円へ36%伸びたのに、社員数は4%増えただけだ。

2015年10月、同社は子会社の横河ブリッジと横河工事を合併させたが、技術者の相互融通を円滑にし、人を増やさずに応札力を高めるのが狙い。今年2月に発表した「第4次中期経営計画」でも、3年後の売上高目標を1250億円に設定しながら、人員は「現状の約1600人程度の水準を維持」するとしている。

橋梁業界は2005年に"業界ぐるみ"の談合が発覚し、軒並み赤字に転落したが、横河ブリッジHDはそこから体制を立て直し、2015年3月期の純益は42億円と四半世紀前の最高益44億円に肉薄した。その原動力は2つ。物流倉庫向けなどシステム建築を橋梁に並ぶ収益事業に育てたこと、そして体質のスリム化だ。だが、もし、人員抑制策が事故の誘因の1つとすれば、好決算も台無しになってしまう。

修繕・改修が必要な2109キロ

事故後、横河ブリッジHDは4~5班のチームを現地に派遣し、警察の捜査協力や復旧作業に当たっている。原因解明は警察と、施主のNEXCO西日本(西日本高速道路)の技術検討委員会に委ねられるが、まな板に載ったのは横河ブリッジHDだけではない。

NEXCOによれば、全国9000キロメートルの高速道路のうち4割、橋梁やトンネルの2割が供用開始から30年が経過している。経年劣化が進み、橋梁の床版や橋桁の取り替えなど大規模修繕・改修が必要な箇所は2109キロメートル、その事業費は3兆円に上る。

橋梁業界にとって巨大な新市場だが、整地され隔離された場所で施工される新設橋梁と違い、大規模改修は市民が日常生活を営むただ中での工事になる。安全や環境、地元社会への配慮の必要性はそれこそケタ違いに高くなる。

そのための人員、技術の備えは整っているのか。今回の橋桁崩落事故は改めて、業界全体の覚悟を迫る「啓示」(悲劇的な)と言えるかも知れない。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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