橋桁が崩落、横河ブリッジに何があったのか 最高益更新の中で最悪の事故が起きた
熊本地震が引き起こした土石流によって跡形もなく消え去った阿蘇大橋。天災の猛威を改めて思い知らされた。
その6日後の4月22日、今度は遠く離れた神戸市で橋梁の「人災」が起きた。建設中の新名神高速道路で長さ120メートル、重さ1350トンの橋桁が崩落。作業員2人が亡くなり、8人が重軽傷を負う大事故となった。新名神の事故現場の下を国道176号線が走っている。一般車は巻き込まれなかったが、そのリスクも十分にあった。
工事を担当していたのは橋梁最大手、横河ブリッジホールディングス。前2016年3月期に25年ぶりの最高益更新を確実にしていた中で起こった最悪の事故である。
橋桁は橋脚に定置するために、いったんジャッキで支えた上で、上部に「セッティングビーム」という構造物を取り付けて吊り上げる。事故の原因については、セッティングビームと橋桁の重量に耐えかねてジャッキがバランスを崩し、続いて橋桁が落下した、と報じられている。しかし、ジャッキの荷重限界などは予め計算され尽くしているはずだろう。会社側は「原因は分からない」と言うのみだ。
人員抑制策が事故の誘因ではないのか
実は、横河ブリッジHDは18年前の1997年にも北海道千歳市で橋桁の崩落事故を起こしている。この時は、橋桁の形状がカーブしており、橋桁を押し出す過程で計算外の力が掛かったのではないか、と推定されるが、原因はいまだ特定されていない。
今回の橋桁の形状は直線であり、しかも、押し出し=移動が完了した後に起きた。「(千歳の事故があったから)冒険はしない。二重三重の安全措置を講じ、フェイル・セーフにしている」(横河ブリッジHD)。にもかかわらず、事故は起きてしまった。
同業者が指摘するのは、作業員市場の逼迫が影を落とした可能性だ。「ただでさえ人がいない。一般論だが、連休前に工事を終えねばならないとか、与えられた制約の中で作業者が二交代、三交代でやっていたのだとしたら、厳しい」。
横河ブリッジHDは「それは違う」と言う。「3人でやるところを2人、1人に絞るというようなことはしていない。スーパーバイザーが何人も現場に常駐している。全然、下請け任せではなかった」。
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