「人材育成の8割は異動で決まる」 松井忠三・良品計画会長
私は2001年1月に社長に就任すると、海外のリストラ、国内不採算店の閉鎖・縮小、不良在庫の処理などを行い、経営改革プロジェクトを発足させた。
人事に関係するリストラとしては、前経営体制を退任か降格させ、経営陣を強化した。店長とのダイレクトコミュニケーションにより、現場の情報を直接受け取れるようにした。組織体制を変更し、主要幹部人材を固定した。
これらの施策によって1年後の2002年には店舗リストラが一巡し、次なる成長へ向けての準備に入った。とくに人材育成に重きを置く施策が2003年、2004年からスタートしていく。
--その人材育成の仕組みを教えていただけますか。
人材育成の土台として、「MUJI GRAM」と「本部業務基準書」を作成した。「MUJI GRAM」は販売オペレーションマニュアル。内容別に13冊に分かれ、総ページ数は1780ページある。「MUJI GRAM」を作成した理由は業務の標準化だ。
小売業には「店長の背中を見て育つ」という言葉があるが、店長は百人百様だ。店長の背中を見ていては、その店長のやり方しか学べない。またスキルもばらばらになる。これでは企業としての人材育成とは言えない。
マニュアルが必要だと考えた契機は、ある新店舗オープンの時の経験だ。新店舗のオープン前日に、ようやく売場ができあがり「やれやれ、これで何とかオープンにこぎつけた」と思っていたら、応援に駆けつけていた他店舗の店長が「こうした方がいい」と変更する。それが何とか終了すると、他の店長が「いや、そこはこうした方がいい」と再度作り替えてしまう。
しかし店舗オープンの時に最高の売場づくりを目指しているわけではない。時間までに売場をつくり、定時に店舗をオープンしてお客さまを迎え入れなければならない。ところが店長たちは自分の経験にこだわっていた。その時に店舗業務の標準化の必要性を痛感したのだ。そこで店舗で必要な実践的なスキル、やり方を徹底的に言語化し、「MUJI GRAM」を作成した。
この「MUJI GRAM」は、新入社員研修から始まる各種研修の基本教材になっている。またイントラネットで社員やスタッフに開放されている。内容は毎月更新し、つねに最新事例に対処できるようにアップデートしている。