「人材育成の8割は異動で決まる」 松井忠三・良品計画会長

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 --「ファイブボックス」を使ったサクセッションプランを導入された動機は何でしょうか?

西友時代の経験だ。先ほど西友に18年勤めたと言った。最初の3年間は店舗勤務だったが、残りの15年は人事部門にいた。15年の後半は教育を担当した。1980年代の後半だ。
当時のスーパー業界は苦戦しており、西友も経営に苦しんだ。リストラを進め、行き詰まると社長が交代した。そして社長が交代するたびに、数十人の部長が辞めていった。派閥の弊害だ。

当時の西友には300人くらいの部長がいたが、優秀だから部長になったわけだ。そういう人材が辞めるのは大きな損失だ。そこで人材という資産を継続的に活かせる仕組みが必要だという思いを持った。そこで「ファイブボックス」を使う評価を導入した。

--「異動による人材育成」も西友時代の経験から生まれたものでしょうか?

西友時代に多くのことを学んだ。教育を担当していたころに、いろんな研修を行ったが、研修での育成には限界がある。もっとも思い出深い研修は、部長以上向けに行った意識改革研修だ。アメリカで自殺者も出たというプログラムを日本向けにアレンジした刺激の強い研修だったが、それでも経営幹部の意識は変わらなかった。

そういう幹部たちはどのようなキャリアを経ていたかというと、入社後の店舗勤務を経た後は、経理なら経理、人事なら人事、販売なら販売というように、1つの部門の中でキャリアを積んでいくのが一般的だった。その結果、自部門の利益を守ろうとする意識が芽生え、閥が生まれた。このような傾向は、わたしが経営改革を行う以前の良品計画にもあった。

販売部なら販売部一筋、商品部なら商品部一筋というキャリアを積み、いままでもこれからも同じキャリアなら、それぞれがよって立つ基盤の利益を守ろうとするのはある意味で当然とも言える。ただその利益は「部分最適」に過ぎず、「部分最適」から「全体最適」は生まれない。わたしはこれを「部分最適の累積は、全体最適にはならない」と表現している。

--異動ではどの程度の職種変更があるのでしょうか?

異動にあたってはそれまでの職種の専門性よりも多様なキャリアを優先する。昨年の異動では、営業部門と管理部門の役員を全員入れ替えた。先ほど経理の話をしたが、販売部(店舗)から本社のスタッフ部門への異動は当然ある。 

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