「人材育成の8割は異動で決まる」 松井忠三・良品計画会長
--「MUJI GRAM」と「本部業務基準書」で人材育成は万全ということでしょうか?
いやそうではない。業務基準書による育成は1割に過ぎない。良品計画の人材育成のフレームは、土台として「業務基準書による育成」があり、その上に全社最適・育成視点で異動・配置を検討する「人材委員会」があり、さらにその上に研修などを計画する「人材育成委員会」が位置付けられている。
「業務基準書による育成」と「人材育成委員会」がそれぞれ1割、残りの8割は「人材委員会」による異動と位置づけている。人は仕事を通じてこそ成長するものである。
最も重要な「人材委員会」について説明しよう。「人材委員会」は適材適所の配置を実現するための仕組みであり、役員~部長ポストの後任候補をノミネートする検討機関だ。2月と9月に定期異動が行われるため、それぞれ2カ月前の12月と7月に開催する。誰にどういう経験をさせて成長を促すかといったことを話し合い、定期異動に反映させているのだ。
役員と40人の部長については半日、90人の課長については2日ほどかけて、一人ひとりの現状と異動の必要性を議論する。課長から役員までの人材一人ひとりについて、潜在能力やパフォーマンス、評価歴などを基に、異動・配置を検討する。部長以上については全役員の話し合いで、課長クラスについては部門長と部長の話し合いで決定する。
--「人材委員会」での評価で使っておられるツールは何でしょうか?
「ファイブボックス」という評価ツールだ。GEで作られウォルマートでも使われているツールを良品計画用にカスタマイズした独自ツールだ。
横軸に潜在能力、縦軸にパフォーマンスを置き、1)から5)までの5象限に分ける。販売本部長のファイブボックスであれば、1)に販売本部長の後継候補が入る。パフォーマンスと潜在能力がともに高く、すぐにでもそのポストが務まりそうな人だ。2)は専門職的なイメージで、そのポストの後継者になる力はないが、高いパフォーマンスを上げている人材だ。これに対して、3)は、後継者になる資質はあるがまだ若く、次に昇進するときに、2)ではなく1)に来そうと見えている人が入る。
このファイブボックスを、部長以上の各ポストについて作成する。このファイブボックスは評価ツールとして機能するが、幹部の後継者を明確にするサクセッションプランでもある。