ウォール街の金融マン、「報酬規制案」に騒然  規制当局が21日に発表した規制案とは?

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4月25日、先週発表された新たな報酬規制案の下で手掛けた取引などがが破綻した場合はボーナスを返上しなければならない可能性があるため、米ウォール街の銀行員やトレーダーが同案を精査していることが分かった。写真は2013年10月、NY証券取引所前で(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

[ニューヨーク 25日 ロイター] - 米ウォール街の銀行員やトレーダーたちは、先週発表された新たな報酬規制の案を精査しようとしている。導入されれば、報酬の支払いが今よりも長期間保留される上、手掛けた取引や融資、売買が破綻した場合にはボーナスを返上しなければならない可能性がある。

従業員や人材採用担当者の話では、米規制当局が21日に規制案を発表して以来、業界は誰の報酬が影響を受けるのかを把握しようとして騒然となっている。

人材採用企業オプションズ・グループの最高経営責任者(CEO)マイケル・カープ氏は「誰もがそのことを話しており、これが何を引き起こすのか理解しようとしている」と話す。

上級幹部や損失を出したトレーダーらが高額の退職金を手にしていると批判されたことから、金融大手は2007-09年の金融危機の後、従業員の報酬制度を著しく変えてきた。

報酬制度は企業によって異なるが、以前よりも多くの報酬について支払いを保留しているほか、報酬に占める株式の割合を増やしたり、報酬の「クローバック(回収)」条項を雇用契約に組み込んだりしている。

提示された新規制案は、金融大手JPモルガン・チェース<JPM.N>から米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)、米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)まで、大手金融機関の上級幹部や高給の従業員に適用される。下位のトレーダーや銀行員、融資の引き受け担当者でも「著しくリスクをとる者」とみなされれば適用対象となる可能性がある。

対象は、最高水準の給与を受け取っているか、ボーナスが全給与の少なくとも3分の1を占めるか、当該企業の資本の最低0.5%以上について「権限」を有する者だ。

2011年に前回の報酬規制案が発表された時には、1万件以上の意見が寄せられた。

今回の新規制案は、この時のものよりも厳しい内容となっているが、賃金のコンサルタントらは、既に業界では大幅な制度変更がなされており、新規制案は大きな変化をもたらさないとみる。例えば一部の企業は既に、規制当局が提案する4年間よりも長くボーナスの支払いを保留している。

匿名で取材に応じた銀行幹部は新規制案について、報酬に関する制限の度合いを変えるだけであり、報酬制度そのものを変えるわけではないと指摘する。既に存在する広範な規制を超えて、業界のモラルや採用制度に影響することはないだろうと述べた。

人材コンサルティング会社ラッセル・レイノルズ・アソシエーツのコンサルタント、レベッカ・グラスマン氏は「この規制案でショックが起きることはないと思う。こうした規制を予期していないという人は聞いたことがない。少なくとも気持ちの準備をしていない人はいない」と述べる。

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