中国が台湾に対する威圧を露骨に強め始めた 台湾新総統の多難な船出
[北京/台北 21日 ロイター] - 蔡英文氏の新台湾総統就任を約1カ月後に控え、中国は同国に対する圧力を強めている。反中感情の波に乗って当選した独立派の蔡氏にとって、前途多難なスタートになりそうだ。
中国はこの数週間で、かつて台湾と外交関係のあったガンビアと国交を回復。一方、ケニアで通信詐欺に関与したとみられる台湾人を中国に送致させた。犯罪として扱われるよりも政治的に対処されたとして、台湾側はこれを非難している。
台湾はまた、中国と台湾の高官をつなぐホットラインにおいて、中国が最近の緊急時に2度返事をしなかったことを明らかにした。
中国は、台湾を言うことの聞かない自国の一部と見なしている。必要とあらば力づくで引き戻し、親中の台湾現政権と同様、新政府も「一つの中国」政策を堅持してもらいたいと考えている。
「中華民国」としての台湾を認めているのはわずか22カ国で、ケニアを含む大半は北京に指導者がいる「中華人民共和国」と外交関係を結んでいる。
台湾は中国にとって、最も神経質な政治問題の一つであり、共産党の懸案事項の中核をなしている。南シナ海の領有権問題よりも大きい。
中国と台湾の対話が断たれるリスクも
今年1月に行われた選挙で蔡英文氏と同氏率いる民主進歩党(民進党)が圧勝してから、中国政府は同氏の動向を注視していくと繰り返し警告している。蔡氏は5月20日に総統に就任する。
2008年に国民党の馬英九氏が総統になって以降、ハイレベル協議が定期的に行われるなど、中国との間で培われてきたかなり良好な関係が危険にさらされる恐れがある。
北京にある清華大学の台湾専門家、Chen Qinhao氏は人民日報のなかで、もし蔡氏が対中政策を説明しないなら、中国と台湾の対話が断たれるリスクがあると指摘する。