中国が台湾に対する威圧を露骨に強め始めた 台湾新総統の多難な船出

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台湾の当局者も、情勢を見極めているような状況だ。

国家安全局は異例にも、ガンビアの動きは「中国の期待に沿う」よう蔡氏に圧力をかけるためだとしている。

一方、中国との平和を望み、体制を維持したいとする蔡氏は、これまで自身のフェイスブックもしくは党を通してしか語っていない。

「(ケニアからの)台湾人の国外退去に関する問題で、われわれを代表する権利など北京にはない」と、台湾籍の人たちが詐欺に関与したとしてケニアから中国に強制的に送致された問題について、蔡氏は先週フェイスブックにこう記した。

意図的な無関心か

台湾によれば、中国は時折、意図的に対話を避けているという。

台湾問題を担当する中国当局トップである国務院台湾事務弁公室主任の張志軍氏は、ホットラインで台湾側がガンビアの件で同氏と連絡を取ろうと躍起になっていたとき、オフィスにはいなかった。

また、台湾の中国政策を主管する行政院大陸委員会によると、ケニアの件で連絡が取れるようになるまでに少なくとも2日かかったという。

「意図的に無関心を装っているのか」と、民進党幹部のLiuShyh-fang氏は語った。

中国の国務院台湾事務弁公室はコメントの要請に応じなかった。

中国側は、通信詐欺事件をめぐる騒動に激怒しており、これは単なる刑事事件だと主張している。

中国はまた、マレーシアから台湾に送致された通信詐欺の容疑者が釈放されたことを受け、台湾は中国人の被害者を無視していると非難。これに対し、台湾側は証拠不十分だったとしている。

こうした通信詐欺事件をめぐり、一部の中国国営メディアは、蔡氏を名指ししなかったとしても、非常に個人的な攻撃を行っている。

19日付の海外版「人民日報」は一面の社説で、「高い給料と票の上にただ安穏としているある特定の議員たち」は、犯罪撲滅について考えるよりも、自分たちを救世主やヒーローとして演出していると痛烈に批判した。

中国政府は、蔡氏が中国政策を明確にすることを望んでいるが、同氏は口を閉ざしたままだ。

その背景には、中国軍の存在がある。

中央軍事委員会副主席の許其亮氏は先週、台湾の対岸に位置する福建省の部隊を訪れ、軍事力強化に励むよう激励した。

中国軍は先月、1949年に内戦で国民党が台湾に逃れたのに続き国民党軍に勝利した、重要だがあまり知られていない記念日を祝ったが、このことは中国軍が今なお台湾を中国の戦略的優先事項の一つと考えていることを思い起こさせる。

「われわれは『台湾を再統合せよ』と大声で叫ばなくてはならない」と、南京軍区副司令官を務めた王洪光中将は先月、インターネット上でこのように記した。

(Ben Blanchard記者、J.R. Wu記者、翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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