「FRBの利上げ、年内行われる可能性はない」 BNPパリバのFRBウォッチャーに聞く

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――最近、欧米の経済論壇では、いわゆる「ヘリコプターマネー」の議論が盛んです。

いわゆるヘリコプターマネーにもいろいろあるが、定義としては、中央銀行が紙幣を増発し、マネーサプライを増やして、政府の支出を増やす政策を指す。政府支出にも、商品券を配るものから、インフラ投資までさまざまだが、いずれにしてもQEよりもずっとよい政策だ。

というのも、米国や英国でQEが実施され、その金額はGDPの4分の1に達したが、それで増えたGDPはわずか1、2%程度に過ぎない。これに対し、ヘリコプターマネーでファイナンスし、インフラ投資を行えば、1%の支出増加がそのままGDPを1%増やす。しかも、短期間で効く。さらに、為替レートに対する影響が小さいのがメリットだ。

QEやマイナス金利政策は、為替に影響が出てくるので、裏口から為替介入をするような政策になるわけだが、ヘリコプターマネーにはそうした懸念はない。

最終解決を先延ばしにして債務が膨らんでいる

――マイナス面はないのですか。

ヘリコプターマネーは最初はよいのだが、往々にして人気とりの政策になりがちで、財政出動が非常に無責任になる恐れがある。

――結論的に、ヘリコプターマネーに踏み切るべきではない、ということですか。

ドイツでは、ヘリコプターマネーによってハイパーインフレになったという苦い記憶がある。ドイツでは、ヘリコプターマネーが最終的にどこに行きつくのか、その記憶があまりに強くて実施できない。

先程、金融緩和中毒になっているという話があったが、ヘリコプターマネーも非常に中毒になりやすい。こういう極端な政策を行うと、当座はよいかもしれないが、ある時点で、もはややっていけなくなる。したがって、他に手段がないときしか選ぶべきではない道ということになる。

今まで需要を伸ばすために、債務を増やし、資産価格を上げて需要を喚起する政策をずっとやってきたわけだ。ただ、もはやかなり債務水準が高くなっており、さらにレバレッジを効かせることは難しい。踏み倒したり、インフレにして借金を小さくすることができるが、借金はいずれ返さなければならない日が来る。そういうことを誰もやりたくないので、どんどん最終解決を先延ばしにしてきた。そのうち、問題が大きくなりすぎて、解決できなくなる危険がある。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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