「FRBの利上げ、年内行われる可能性はない」 BNPパリバのFRBウォッチャーに聞く
――世界経済を見渡すと、米国は相対的によい状況です。その米国が非伝統的な手段に打って出なければいけない状態がやってくるのでしょうか。
米国が非伝統的な手段に出なければならないということは、他の国ではもっとそうした政策が必要になるということだろう。
ただ、金融政策自体が適切な政策なのかどうか、根本的な問題がある。元々金融政策は将来起きるであろう投資を前倒しさせるに過ぎない。通常は山から谷に持ってくることになるが、2008年のような金融危機になると、谷から谷に持ってくることになる。そうなると、より財政的な手当てが必要になるが、政治的な意思として決定できないと、自分の仕事ではないのだろうな、と思いつつ、中央銀行が谷を埋めざるを得ない状況になる。
――米国は過去何度もリセッションを経験してきました。
バブルを生んではつぶし、また次のバブルを膨らます。2000年にドットコムバブルが崩壊し、FRBがサブプライムというバブルを膨らませた。それがつぶれると、今度は商品市況バブルだ。その次のバブルは住宅分野だろう。
――どういうことですか。
米国の法人部門は借金が多すぎる。法人部門の対GDP比の債務水準はかなり高くなっている。それが収縮すると、個人消費を刺激するしかない。モーゲージ金利を引き下げ、仕事がある人なら家を買おう、ということだ。このバブルが崩壊したら、もう終わりだ。
反対する人の少ない金融政策に依存しがち
――結局、米国も欧州も金融政策に依存しすぎていませんか。
たしかに、金融政策に至っては中毒症状だろう。欧州の大半の国のように余剰生産能力が残っているところは、財政政策という手もある。
一方、日本やドイツ、米国、英国のようなほぼ完全雇用の国は、生産性を改善する構造改革が必要だ。構造改革は、失業する人が増えることを意味する。負ける人が出てくる。だから、構造改革に踏み切るかは政治判断になる。負けた人をどう守っていくのか。これを中央銀行が担当するのか。
金利を上げ下げする判断を中央銀行は議会に委ねることはできない。そして、金融政策は反対する人がいちばん少ない政策手段だ。その結果、安易に使いやすいということだけで、金融政策が使われている。結局、金融政策の乱用を防ぐような形で中央銀行のミッションを書き直すか、政治家がより責任を持つか、そのどちらかしかない。
――トレードオフですね。
構造改革を行うとなると、現在の政治家が割を食って、将来経済が改善すると、将来の政治家が得をする。金融政策は将来コストが発生するにしても、いま事態を改善させるので、政治家が再選されたいなら、金融政策を選ぶだろう。中国政府のように、政治家に選挙の不安のない国では、より長期的な見方ができるかもしれないが・・・。
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