「FRBの利上げ、年内行われる可能性はない」 BNPパリバのFRBウォッチャーに聞く

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――そうであれば、昨年12月の利上げは過ちだったのでしょうか。

そう思う。もし利上げをするのであれば、グローバル経済がより力強く、インフレ率が上昇していた2013年か2014年に踏み切るべきだった。ところが、もはや利上げが必要のないところで利上げをしてしまった。

――米国の政界ではFRBに対する批判が強いようです。大統領選挙はFRBの政策決定判断に影響を与えているのでしょうか。

そうは思わない。直接の政治的圧力はないと思う。過去の歴史を振り返ると、2004年の選挙の年にも利上げを行っている。

――利上げが一回もないとすれば、むしろ次は利下げなり、緩和手段を模索する局面が来るかもしれません。どういう手段がFRBに残されているのでしょうか。

ポール・モーティマリー(Paul Mortimer-Lee) /BNPパリバのマーケットエコノミストチームの総括責任者および北米担当のチーフエコノミスト。イングランド銀行での経済分析・予測と構造分析の担当を経て、1995年からBNPパリバ。IMFにも勤務経験。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の経済学士号、金融修士号取得

まず状況が悪くなると、25ベーシスポイント(0.25%)の利下げに踏み切る。それと、フォワードガイダンス。先の政策見通しを示すことで、さらに、債券利回りを下げていく。それによってクレジットスプレッドを押し下げ、株価を押し上げ、ドル高が若干緩和される。

そうした政策でうまくいかなければ、満期の到来した国債の再投資を、より長期の国債に振り替える。いわゆるオペレーションツイスト。さらにそれがうまくいかなければ、また、QE(量的緩和)があるだろう。

今度実施するQEは、おそらくオープンエンドの(期限のない)QEになるだろう。これまでのQEは期限付きだったので失敗した。その教訓をFRBは学んだので、インフレ目標を達成するまでQEを続けるだろう。
それ以外の選択肢としては、10年物国債の利回りにターゲットを設定した、国債買い取り策だ。実際には何も買い取らなくても、コミットしただけで債券利回りが動いたことが過去にある。

マイナス金利政策については、米国ではMMFの市場規模が大きいので、ここがマイナス金利になってしまうと影響が非常に大きい。この点は日本や欧州と異なる点だ。

金融政策でダメなら財政政策出動へ

――米国でマイナス金利政策の導入はないと?

マイナス金利のコストとメリットを考えて、それでもやるメリットが上回るなら、絶対にないとはいえない。しかし、金融政策をいろいろ組み合わせても十分でないとなると、次は財政政策の出動となるだろう。実際G20で安倍晋三首相は財政出動を提案した。

これは減税だけでなく、インフラ投資の提案も含んでいる。米国でも、ドイツでもインフラ投資は望まれている。欧州では予期せぬ人口流入、つまり移民問題があるので、インフラ投資自体は理にかなっていると思う。
ただ、政治家の受けはあまり良くない。とくに、共和党は減税を行いたいが、財政支出は拡大したくない。

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